平穏というなの変化
アリスが帰国したその日にケンはソウスケに連絡していた。
「悪い連絡して。明日なんだが先生を呼んできてくれないか?」
「良いけどなんで?」
「俺が佐藤達の前で土下座する。多分だが佐藤達は俺を殴ると思うんだ。だから目の前を見せれば謹慎になると思う……」
「お前が殴られるって本気で言ってるのかよ」
「本気だ。俺はアリスをいじめから救いたい」
ソウスケからは沈黙が数十秒ほど流れた。
「……わかった。それじゃあ俺から言いたいことがある」
「ん? なんだ」
「いじめを助けられなくてすまん……」
ソウスケ……。
俺は知っていた。ソウスケも実は落書きの机とか探し物をこっそりと手伝ってくれたということを。
「良いよ。今回お前にも手を貸してく。それだけだ」
「おう。任せろ。特別な人を用意してやるから」
まさか特別の人が高本先輩だとは……。
「君たちはそこで何をやっているんだ?」
高本先輩はこっちに近づいて来る。気迫が凄い……。
「い、いやこれは遊びですよ」
「遊び? それじゃあ机の花と落書きもか?」
高本先輩はアリスの机に指を指した。
「あ……あれも、そう遊びですよ。ただの遊びでやったことなんですよ。いじめとかじゃないですよ」
「ただの遊び……?」
高本先輩は机を叩きさっき響いた音を鳴らした。
「ふざけるんじゃない!!」
「「「っ!!?」」」
「遊びだからと言って相手を傷つけていいのか? 勉強が出来ないからって見せしめにしていいのか? 運動が出来ないからって殴ってもいいのか?」
「せ、先輩なにを言ってるんですか?」
「いいから答えてみろ!」
「っ! い、いやダメです……」
気迫でマホは謝った。
「ま、待ってくださいよ先輩!」
絡んできたのはさっきまでお菓子を食べていたマキとか言う子だった。
「私はなにもしていないです。二人は落書きとか教科書を捨てたりとかしてたけど私は関係ない! だって直接手を出していないし!」
「ちょっとマキ! あんた何言ってるの!」
「だってそうじゃない! 私関わってないし!」
高本先輩はまた机を叩いた。
「関わってない? それは彼女らの行動を止めたってことでいいのか? 手を下してなくてもその場で笑っていたの同罪だ。「やめろ」と止めに入ってないのだから」
「私は知らない!」
「なら。お兄さんの目を見て同じことを言えるか?」
彼女は目が白黒になっていた。
「い、言えません……。わ、笑っていました。ごめんなさい」
彼女は泣き崩れた。
先輩はケンの手を伸ばしていた。
「大丈夫お兄さん?」
「あ、はい……」
先輩の手を取った瞬間先生たちが教室に飛び込んできた。
「何事だ!」
高本先輩は先生の方に向かって歩き耳元でなにか呟いていた。
「先生。あの机に見覚えはないんですか? 自分は関係ないじゃ済まされないですよ」
「っ! ……佐藤、安藤、山崎。話をしようか」
先生はマホ達を連れて行った。
「悪かったわよ……」
マホがそう言って教室を出て行った。
「でもどうして先輩がここに?」
「昔友達がいじめで自殺したんだ」
「え?」
この学校で自殺したって初めて聞いた話だった。
「なにも出来なかった。先生も見て見ぬ振りで。アリスさんがいじめられているってファンの子から聞いてソウスケくんに頼んだんだよ。一言喝をと思って」
「そうだったんですか……」
そんな辛い過去があったなんて。先輩は爽やかでカッコ良かった。
「先輩ありがとうございます」
先輩は手を振って去って行き入れ違いでソウスケが近づいてきた。
「悪かったケン。いじめのこと手助け出来なくて」
「電話でも謝ってくれたからいいって」
するとクラスメイトの数人が近づいてきた。
「俺も悪かった」「ごめんね」「すまなかった。土下座カッコ良かったぜ」
「あ、ありがたいんだが俺よりアリスに言ってくれ。そっちの方が本人も嬉しいと思うから」
クラスメイトは納得して席に座った。
「アリス。みんな認めてくれたよ」
こうして平穏な日常は戻っていくのだった。
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