第15話:毅然とした赤毛剣士は、謝罪を求める

◆◇◆◇◆


 俺たちはギルドに戻り、キングリザードから取った骨や肉など、戦利品を受付に提出した。


「キングリザード2頭ですかっ!? さすが全員Aランクのパーティですね!」


 受付の女の子が、目を丸くしている。

 やはりこの戦果は、相当なものなのだろう。


 ここはS級の冒険者もいる都会とは違う。

 田舎のこんな小さな町のギルドでは、Aランクばかり揃っているパーティなんてめったにいない。


 だから、一度に2頭ものキングリザードを狩ってきたのを見るのは初めてらしい。


 受付の女の子は嬉しそうにそう言って、今回の報酬を差し出した。


 カウンターの上にぶ厚い札束が置かれる。

 今回の報酬はなんと、500万ジル。


 ドグラスが受け取ろうと手を伸ばした。

 すると横からさっとスカイアードが手を出して、札束をさらう。


「あ、なにすんだよっ!?」


「お前にこれを受け取る権利はないだろ? 偽Aランクさんよ!」


 ドグラスはウグっと喉を鳴らすが、言い返すことはできない。

 そしてスカイアードは10枚ほど1万ジル紙幣を抜き取って、後は全て俺の胸に突きつけた。


「ほらよ、アディ。これはお前ら二人で、好きに分けろ」


「えっ? あ……いや……」


 俺が戸惑っていると、横からマリリアットが、目の前まで近寄ってきた。


「そうですよぉ。アディが受け取るべきです」


 マリリアットはニコリと笑った。

 すると彼女との間に割って入るように、キャティが身体を入れてくる。


「ほら、アディ。マリリンもそう言ってるし、受け取れ」


 キャティはスカイアードから札束を受け取り、それを俺に差し出した。


「あ、ああ。そうだな」


 この前マリリアットがくれた25万ジルは、後で感謝を込めて返そう。


 そう考えて、俺は札束を受け取った。


 ──でもこれは、キャティが受け取るべきだ。

 後でキャティに全部渡そう。


 そう思ってキャティを見たら……


「さて、ドグラス、フォスター」


 キャティは腰に両手を当てて、冷たい表情で二人の名を呼んだ。


「な……なんだよ?」


「ここでアディにきっちりと謝ってもらおうか」


「何をだ? 俺はアディに謝ることなんてしてない」


「はぁっ? ドグラス貴様、この期に及んでまだそんなことを言ってるのかっ!? 貴様ら、アディをパーティから追い出したり、バカにしたりしただろがっ!!」


 ドグラスはその大きな身体を縮こめて、びくっと震えた。

 さすがにあのキャティの強さを見た後では、ドグラスもビビッている。


 ところでキャティは美人なのに、怒ったらこんな怖い顔をするんだなぁ。


 ──こわっ……


「なあキャティ、もういいよ」


「よくない。ケジメというものは大事だ」


 ──それはそうなんだが……


 俺はもう、コイツらのことなんか、どうでもよくなってる。


「フォスターはどうなんだ?」


「いや、俺は……俺はドグラスに脅されて、アディの追放に賛成しただけだ。俺は悪くない」


「はぁっ? 他人のせいにするのか? フォスターお前、ホント救いようのないヤツだな」


 フォスターはキャティの言葉に、ギリっと歯軋りをした。


「おい、キャティ。ちょっとたまたま運よくキングリザードを倒せたからって、いい気になるなよ? お前らごときが偉そうに言いやがって…… 俺がその気になりゃ、お前なんて魔法で一発で……ぶぎゃっ!」


 ──あ。


 フォスターが言い終わらないうちに。

 キャティの右手の裏拳がフォスターの顔面に炸裂した。

 フォスターは気を失って、ぶっ倒れた。

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