第14話:クールな赤毛剣士は、なぜか機嫌が悪い

 身体ごとキングリザードが崩れ落ちるのを見て、スカイアードは歓声を上げた。


「おおっ!? すげぇー!」


 ドグラスは何が起きたかまだ理解できないようだ。

 ぽかんと口を開けて、間抜けな顔をさらけ出している。


「キャティ気を抜くな! もう一頭だ! 来るぞ!」


 キャティは俺の声に、表情を引き締めた。


 新しく現れたキングリザードが、キャティの動きを見た。


「ギャァァアン!」と叫びながら彼女に迫って行く。


 リザードが火炎を吐こうと口を開ける。

 そこに向けて、キャティはまた飛び上がる。


 あっという間にキャティは、

 リザードの頭の高さに到達する。


 息を吸い込むために、大きく開けたキングリザードの口。


 そこを狙いすましたように、

 キャティは横向きに、

 剣を斬りつけた!


 リザードの顔は、口から上だけが横に吹っ飛んだ。


 そしてボトリと音を立てて、地面に落ちる。


 その数秒後。その巨体は……


 地響きを立てて倒れた。



 ──よし、やった!


 キングリザード2頭を一撃だ。

 凄いぞキャティ!


 剣と腕が【接着スキル】で強化されているが、スピードと剣さばきはキャティの元々の実力だ。


 それがなければ、あんな簡単にキングリザードなんて倒せない。


「キャ……キャティ。お前、非力なくせに、なんでそんなに強くなったんだ?」


 スタスタと歩いて俺たちの方に戻ってきたキャティに、ドグラスが唖然として尋ねる。


「貴様なんかに教える必要はない」


 冷たく言い放つキャティに、ウグっと喉を鳴らすドグラス。


「まあでも、アディのおかげだということは、言っておこう」


「アディのおかげ? どういうことだ?」


「貴様みたいなヤツには、わからなくていい。わかったら、貴様はまたアディにたかろうとするだろうからな」


 そう言ってキャティは、俺を向いてニヤリと笑う。


 きりりとした赤毛の美人剣士。

 カッコいいじゃないか。


「キャティーっ! ありがとですぅー!」


 マリリアットが顔をくしゃくしゃにして、キャティに抱きついた。


「いや、気にするな」


 キャティは照れたような声を出した。

 顔はクールなままだが、嬉しいのだろう。


 マリリアットはキャティから離れると、今度は俺に抱きついてきた。


「アディもありがとぉー!」


 俺の首に腕を回し、ほっぺ同士をすりすりしてくる。

 胸にはマリリアットの柔らかく大きな物が当たってる。


「あ、いや、マリリン、よせって……」


 両手でマリリアットを押し返した。

 感触は気持ち良かったが、恥ずかしすぎる。


 ふとドグラスを見たら、なぜかもの凄い形相で俺を睨んでいる。


 ──なんでだ?


 よくわからんけど、まあいいか。


「俺じゃなくて、キャティのおかげだし……」


 と思って今度はキャティを見た。


 そしたらなぜか、キャティは知らない間に向こうを向いている。

 回り込んでキャティの顔を見たら、憮然として機嫌が悪そうだ。


 ──ん?


 さっきまで、照れたような感じだったのに、どうしたんだ?

 急にお腹でも痛くなったのか?


「どうした、キャティ?」


「いや、なんでもない。さあ、帰ろう」


「……えっ? あっ、待ってくれよ」


 キャティは急にスタスタと、ダンジョンの出口に向いて歩きだした。


 ──そうか。


 孤児院のみんなに感謝されるなんて、今までなかったから……


 キャティはきっと照れてるんだな。


 そう思いながら、俺は早足でキャティを追いかけた。

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