第12話:追い込まれたパーティは、息を吹き返す<旧パーティ視点>

 マリリアットが「アディに修理して貰ったロッドです……」と答えるのを聞いて、スカイアードは怪訝な顔をした。


「アディ? ……ああ、無能だって言う、俺の前任者か。……ん? なんだそれ? 凄い魔力が溢れているぞ」


「え……? そうなんですか?」


「なんだお前。自分で気づかなかったのか?」


「はい」


「そんなことも感じられないなんて、やっぱお前、Aランク魔術師の実力はないな」


「は……はい……」


 本物のAランク剣士に鼻で笑われて、マリリアットはしゅんとする。


「だが治癒魔法だけが凄くても、攻撃陣があれじゃあ使えねぇし」


 スカイアードがドグラスとフォスターを一瞥すると、二人は無言でうつむいた。


「いくらAランクの俺だって、このメンバーじゃあ、ヤツは倒せねぇ。だから……逃げるぞ」


「に……逃げられますかぁ……?」


「キングリザードはでかい身体だが、案外俊敏だ。お前らのスピードなら、逃げられるかどうかはわからん。だけど俺なら大丈夫だ。お前らは放って逃げる」


「お……おい、オッサン! そんな無責任を言うな!」


「うるせぇ! お前らが評判倒れなのが悪いんじゃねぇか!」


 ドグラスはスカイアードに一喝されて、ウグっと息を飲み込むしかなかった。


「ちょっと二人とも! 言い合ってる場合じゃない。キングリザードがこっちを睨んでる!」


 フォスターが指差す方向に全員が視線を向けた。

 その魔物は大きく胸を膨らませて息を吸い込んでいる。


「いやぁん! どーしよーっ!?」


 マリリアットがひっくり返りそうなくらい目を丸くして、叫び声をあげる。

 その時、突然どこからか、大きな声がダンジョン内に響き渡った。


「ドグラスは右に走れ! フォスターは左だ! そして炎攻撃を避けながら、同時に攻撃しろ!」


「えっ……?」


 ドグラスとフォスターは一瞬戸惑う。


「早くっ! キングリザードの弱点は、関節の裏側だ!」


 再び聞こえた声の指示どおりに、ドグラスとフォスターは左右に分かれて走る。


 そして攻撃を仕掛ける。


「マリリンは横に走って、炎攻撃を避けろ! 同時に二人に先行して治癒魔法だ!」


「は、はいです!」


 マリリアットは言われたとおりに動く。

 そしてロッドを振って、治癒魔法!


 その時キングリザードは口から勢いよく火炎を吐き出した。

 魔物に向かうドグラスは、斜め横に広がって走っているとは言え、身体に炎が降りかかる。


「あちっ!」


 しかし火傷するそばから、マリリアットの治癒魔法が効く。

 おかげでドグラスは、勢いを落とすことなく、そのままリザードに向かって走る。


 そしてリザードの肘の裏。

 そこにサーベルで斬りつけた。


 同時にフォスターは、マジックワンドを振り上げた。


 波動の攻撃魔法を魔物の喉に打ち込む。


 ドグラス、フォスターの攻撃は両方ともリザードに効いたようだ。


 魔物は「ギャッ!」と小さく声を上げた。


「よし、今がチャンスだ!」


 スカイアードはそう叫んで素早く飛び上がる。

 リザードの目の前に到達すると、その顔に向けて剣を縦に一閃した。


「やったか!?」


 ドグラスの言葉に、スカイアードは冷静に答える。


「いや、まだだ。少し急所を外した。お前ら二人の攻撃が、大してダメージを与えられなかったせいだ。さっきよりはマシだがな」


 スカイアードはドグラスとフォスターを睨んで吐き捨てた。


「で、でもオッサン……これを繰り返せば、なんとかアイツを倒せるよな?」


 スカイアードはそれには答えずに、振り返って先ほどの声のぬしを見た。


「お前は……?」


「俺はアディ・ジョナス。このパーティの旧メンバーだ」


「何だって!? さっきの的確な指示…… 君がアディか……」


「あなたは?」


「俺は君の後釜、スカイアードだ」


 ドグラス、フォスター、マリリアットの3人も、スカイアードの視線の先を追う。

 そこには、なぜか自信に満ちた顔つきの、アディとキャティが立っていた。

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