第11話:尊大な重騎士は、死にかける<旧パーティ視点>

◼️旧パーティ視点◼️


◆◇◆◇◆


「早く! 早くもう一度治癒魔法をかけて、コイツら二人を全回復させろっ!」


 スカイアードはヒット・アンド・アウェイでキングリザードを足止めしながら、マリリアットに向かって叫ぶ。


「いくら俺でも、一人ではコイツを倒すのは無理だ!」


「は、はいぃっ! わかりましたっ!」


 スカイアードは魔物に近づいては斬りつけ、また飛び跳ねて離れる。

 少しはキングリザードにダメージを与えてはいるが、倒すまでには程遠い。


「まあコイツらが全回復したところで、ヤツを倒せるかどうかはわからんがな。俺たちの寿命が少し延びるだけかもしれんが」


「そ……そんな怖いこと、言わないでくださいよぉ……」


 マリリアットは泣きべそをかきながら、ロッドを振りかざす。

 その時突然キングリザードは口を大きく開いて、マリリアットに向かって突風のような息を吐き出した。


「うわぁぁぁん。くさぁぁぁい!」


 マリリアットの金髪がぶわっと吹き上がり、彼女は顔をしかめた。

 振り上げていた手のロッドは、風に吹き飛ばされて、はるか後方に飛んでいく。


 キングリザードは今度はドグラスとフォスターに向かい、大きな爪が生えた腕を振り上げた。

 半回復で、ふらふらで立っていた二人は逃げることもできない。

 まるで子供に乱暴を受ける人形のように切り裂かれる。


「グエッ!」

「ギャァっ!」


 二人の叫び声が響き、もんどりうって二人とも地面に打ちつけられる。


「チッ! 使えないヤツらめ!」


 スカイアードは切り裂かれた二人になんの同情もなく、ただ忌々しげに舌を鳴らした。


 キングリザードはドスドスと足を鳴らして、倒れているドグラスに近づく。


「ドグラスぅー! 逃げてくださーいっ!」


 マリリアットが叫ぶも、ドグラスは「ウググ」と呻くだけで、動けそうにない。


「ひえーん! どうしよー!? ドグラスが……ドグラスが……殺されちゃうー!」


 マリリアットはオロオロして、ぼろぼろ泣き出した。


「こらお前! 白魔術師っ! 泣くな! どうしたらいいか考えろ、このバカっ!」


 スカイアードに罵倒されてマリリアットは、

「えっと……えっと……」

 と一生懸命頭を左右に振った。

 金髪が、渦を巻くようになびく。


「あっ……あれがあったぁ!」


 マリリアットは何かを思いついて、白いローブの懐から、使い込んで古びたロッドを取り出した。


「ケアード!」


 ロッドの先に埋め込まれた石から光が四方に拡散し、辺りは真っ白な光で包まれる。

 それは先ほどよりも、明らかに大きな光。


 すぐにその光が収まる。

 すると目の前には、光りにひるんだキングリザードが、立ちすくんでいるのが見えた。


 倒れて動けないはずのドグラスが、何ごともなかったように、突然すっくと立ち上がって走り出した。

 そしてスカイアードとマリリアットの元に走り寄る。


「助かったぜ、マリリン」


 フォスターも急にきょろきょろと周りを見回した後、立ち上がって彼らに合流した。

 酷かったはずの全身火傷は、綺麗に完治している。


「おいおいおい、白魔術師よっ! なんだそれっ!? すげーじゃねえか! そんなのできるんなら、初めからやれよ!」


「あ、いえ……このロッドを使ったら、いつもどおりに全回復魔法がかけられましたぁ……」


 マリリアットはロッドを顔の前に持って、しげしげと眺めている。


「それは……?」


「アディに修理して貰ったロッドです……」


 なぜかわからないが、アディが修理をしてくれたロッドは、強大な魔力を発したようだ。


 マリリアットは訳がわからず、そのロッドを見つめていた。

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