第9話:優秀な頭脳は、状況を分析する

◼️アディ視点◼️


◆◇◆◇◆


 俺がドグラス達、旧パーティメンバーの話をすると、ジグリットは目を見開いた。


「それは、アディが思ったとおりの可能性が高いな。君が他の3人の武器を接着するたびに、彼らは強くなっていったのだよな?」


「接着するたびかどうかは、はっきりしないけど……」


「Dクラスの者達が、3人も揃って短期間で急激にAクラスに成長するなんて……普通では考えられない。ところでアディ自身の武器は?」


「いや、俺の剣は折れなかったから、接着スキルを使っていない」


「だから君だけは、今までの強さのままなんだ。過去にも武器や防具を接着した経験は?」


「いや、それはないな。俺は接着なんていう地味なスキルはあんまり使いたくなかったから……今まで孤児院の家具とか建物以外には、ほとんど使ったことはないし」


「なるほど。それはやっぱり、彼らが成長したのではなくて、アディのおかげで武器の性能が著しく高まったと考えた方が自然だな」


 ──待てよ。


 あいつら、今日はA難度のクエストに行くって言ってなかったか?

 それも、新しく買い換えた武器を持って。


「あいつら、ヤバいかも……」


 俺はドグラスにクビにされた。

 フォスターもそれに同意した。


 マリリアットは別にしても、あいつら二人がどうなろうと、自業自得と言える。


 だけども……


 俺には、長年一緒に育ったやつらを、見殺しにするなんてできない。


 でも、俺には戦う力がない。

 だからアイツらを助けるとしても、何をどうしたらいいのか……

 すぐには思いつかない。


 俺は目の前の兄妹に事情を説明した。

 するとジグリットは「アディ、助けに行きなさい」と言い出した。


「キャティもアディと一緒に行きなさい」


 この兄妹が孤児院に居た頃は、二人ともドグラスに、役立たず兄妹とバカにされていた。


 なのに……

 助けようという発想になるなんて。

 ジグリットは、なんと人がいいのだろう。


 しかしそれに反してキャティは、


「私は気が進まない」


 と、苦虫を噛み潰したような顔をした。


 別にキャティが冷酷だということではない。

 この兄妹は幼い頃から、ドグラスにバカにされ続けてきたのだ。

 どちらかと言えば、キャティのほうが真っ当な態度と言える。


「わかったよキャティ。君の気持ちはわかる。俺だけで行くよ」


「アディ……君は、それだけバカにされて、パーティをクビにまでされて、なぜヤツらを助けるなんて言うんだ?」


「いや……少なくともマリリンは俺に親切にしてくれたし……。それにドグラスとフォスターだって、幼い頃からの知り合いだ。このまま放っておいて、もし彼らが死んだりしたら、なんとなく嫌な気分になる」


「アディ……君ってヤツは。優しいんだな」


「いやいや、それほどでもないよ」


「わかった。私も一緒に行こう。アディのために」


「お、俺のため?」


「そうだ。アイツらのために動く気にはなれないが、アディには助けてもらった恩がある。君に強化してもらった右腕と剣があれば、アディの安全を守ることができる」


「キャティ……」


 孤児院時代にほとんど関わりのなかった俺のために動いてくれるなんて。


 ──キャティこそ、優しいヤツだ。


 とは言うものの、町から遠く離れたここで、何をどうしたらいいのか?


 悩んで首を捻っていたら、ジグリットが何かを思いついたような顔をした。


「アディ。二つ、質問がある」


「なに?」


 そしてそれが何の役に立つのか、俺にはまったくわからないが、ジグリットは奇妙な質問を始めた。

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