憑いてる彼女のおとしかた

辻野深由

プロローグ

 この世はかくも不思議なもので、存在しないはずのものが存在するのだと言い張ったり、知覚できるはずのないものが見えたり聞こえたりする人たちがいる。


 第六感が強い人間は、普通の人たちとは異なる世界を見ている、らしい。


 例えば、それは神様の存在を知覚して、信じることであったり。

 あるいは、未確認飛行物体を頻繁に目撃することであったり。

 はたまた、幽霊に取り憑かれたりすることであったり。


 七不思議だの奇跡だの心霊現象だのと呼ばれているものは、およそこの世にいるはずのない、そういった存在が引き起こしている超常現象なのだ、とも。


 果たしてそんなものがこの世に存在するのかしないのか、あるのかないのか、信じるか信じないかは、当人次第だ。


 存在が実証されているわけではないし、実在しないことが証明されているわけでもない。多くの人間は、そこにロマンを感じるのだろう。


 なんとも不確かで、曖昧なもんだ。


 だからこそ、誰しもその真相を追い求めたくなるものなんだろうけど。


 確かなことは、そんなものとは一生縁がないような人間が大多数だってこと。


 幽霊なんて認知できないほうがいいに決まってる。

 未確認飛行物体なんて与太話でしかない。

 まして神様なんて、ありがたがっても人生が好転するとも限らない。


 だから、信じるなんて馬鹿馬鹿しい行為でしかない。


 だが残念なことに、世の中には、そういった存在に好かれてしまうような、不幸な人間というのも確実に存在するもので。


 そしてたちの悪いことに、一度その深淵を覗き込んでしまったが最後、そいつらは一生付きまとってくるのだ。




 まるで、儚くも甘酸っぱい初恋のように。

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