第8話 ダンジョンの奥へ

「私には地上で行動できるように専用のパワードスーツがあります。それは管制室から北に30分程度離れたエリア、実験区に管理されていました」

「されていました?」


「はい、。ですがコロニーが土や岩に埋もれている間に、管制室のコントロールが届かなくなり、更に実験区が分断されたのでしょう。ここの深さやコロニーの状態から、実験区の現在地は予測出来ますが、探知は出来ません。仮に実験区があったとしてもパワードスーツが無事なのか分かりません。しかし、それでも探してほしいのです」


 タダでスーツを渡すがはずがないと思っていたが、これが理由か。


 エルノア専用のパワードスーツか。管理している場所がどこにあるか予測ができても、スーツが無事なのかが分からない。

 でも、エルノアにとって大事なものを探さないのは、何だか嫌だ。

 

「分かったエルノア。探そう。それにこんな素晴らしいパワードスーツを貰ったわけだし、それぐらいやらないと俺の気がすまない」

「ありがとうございますマスター!」



 その後、エルノアのパワードスーツを探すための準備を行った。

 大丈夫だと思うが、剣に刃こぼれがないか、回復薬はあるか、靴紐は結んでいるかなどなど。ダンジョンに入った以上に気を使った。

 スタンプを押すのとは比較にならない、難しい依頼だ。

 あっ、スタンプ押してないけど……まぁなんとかなるか。


「そういえば、そのスーツ探しって俺1人だけで行うの?」

「同行しますよマスター」

「どうやって同行するんだ? 管制室から離れられないだろ?」

「方法はあります。ペンダントをこの台座に置いてください」


 指示されたどおりにペンダントを台座に置く。

 すると、ペンダントが一瞬光った。


「本体を管制室から、このペンダントに移動させました」

「一瞬で移動した? 結構便利だな」

「そういう風に作られていますから。ではマスター、出発しましょう」

 

 準備も済んだし、そろそろ出発するかと思ったけど、なにか大事なことを忘れてるような……。


 そうだ。行き先を知らない。

 今いるのはコロニーの管制室だけど、一応ルーヴィルのダンジョン内部のはず。

 であれば、探索範囲は限られるし、ダンジョンの外の可能性だってありえる。


「その実験区ってダンジョンの中にあるんだよな? でもここのダンジョンってかなり小さいし、そんな場所までどうやって行くんだ?」

「実験区は、このダンジョンの奥にあると予測しています」

「ダンジョンの奥? そんな場所なんてあるのか?」

「コロニーによって、なぜかダンジョンの奥に通じる道が偽装されています。なのでその偽装を解除すれば、ダンジョンの奥へと行くことが出来ると思います」


 言われてみればそうか。

 コロニーの偽装のせいで、ここのダンジョンの全貌は誰にも分からない。

 というか、偽装を見抜いて奥に進んでいれば、このダンジョンの難易度が上がってたかもしれない。


 なぜなら、ルーヴィルのダンジョンは6しかないと言われてるからだ。


 その先にある未知のエリア……一体何が待ち受けているのだろうか。 


「マスター、そろそろ出発しましょうか」


 これ以上、細かいことを気にしないほうがいいな。

 それに今大事なのは、エルノアのパワードスーツを探すことだし。 


 いざ、ダンジョンの奥へ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る