第7話 訓練

「どうやって着ればいいの?」

 デルタを手に入れたのはいいが、どうやって着ればいいのか全く分からない。


「映画『ザ・パワードマン』の設定と同じですよ」

 

 あの映画と同じ設定か。なら一度スーツ形態を解除する必要があるな。


 解除方法はたしか……胸中央にあるリアクターを押しながら「変身解除」って言えば、リアクターを中心にスーツが格納され、ペンダントになるはず。


「変身解除」

 予想通り、リアクターを中心にスーツがペンダントに変わる。


 そのペンダントを首にかける。

 次にスーツを着る方法だけど、ペンダントを握りしめながら「変身」って言えばいいはず。

 

「変身」

 ペンダントを中心に俺の体に合うようにスーツが作られていく。


 凄い。映画で見た光景が再現されている。


「喜んでいるようですねマスター」

「たしかにすごいな。身体にフィットして、全然鬱陶しくない」


 想像以上に着心地は良いのだ。


「なぁ、このスーツが着れるのは分かったんだけど、どうやって空を飛んだり武器を出すんだ?」

「良い質問ですマスター。そんなことがあろうかと、誰でも着こなせるような訓練を用意しています」

 待ってましたと、言わんばかりの反応だ。


「さぁ、こちらです」



 変身解除し、管制室の隣の部屋に案内された。

 そこには、謎のカプセル型のベットが横たわっている。

 もしかしてこの中に入って寝ろと?


「なぁエルノアさん。つかぬことをお聞きするが、あのカプセルもどきに寝ることで精神や脳がVR空間とかに転移し、そこで訓練をする……ってことはないよな?」

「さすがは地球人。想像力が豊かですね」

 煽ってきたな。これは流石に想像しすぎか。


「説明が済みました。早速このベットに寝てください」

 まさかの正解だった。




「お目覚めですか、マスター?」


 あれからどのぐらい、時間が経ったのかは分からない。

 体が少し重い。

 VR空間で行った訓練は実に有意義なものだった。


 スーツを着ながら箸で豆をつかむ訓練。

 かすっただけで体が蒸発するレーザーを避けながら、目的地まで飛行する訓練。

 VR空間では疲れたり死ぬことがないから、ありとあらゆる訓練を行った。

 ちなみにこの訓練内容だが、映画に出てきた内容とほとんど同じである。

 あの監督、こういう設定を練るのも好きだったんだよな……。


「おはようエルノア。……あれからどれぐらい経った?」

「そうですね……ざっと2週間と言ったところでしょうか?」


 2週間も寝て過ごしていたのね。

 まてよ……現実世界はそれぐらいでも、VR空間ではそれ以上過ごした気がする。

 だめだ、体がダルくて頭が働かない。


 目覚めたばかりだけど、もう一眠りしよう。



 二度寝から目覚めた俺は、シャワー室で体の汚れを落とし、管制室にいるエルノアに今後どうするかを尋ねた。


「今後ですか……。それはこのコロニーを出た後のことですか?」

「それもあるけど、まずやってほしいことがあるんじゃないか? スーツを着るためだけに訓練を受けさせたわけじゃないだろ?」

「……お見通しですかマスター。実はあなたにやってほしいことがあるんです」

「やってほしいこと?」

「それは、私のパワードスーツを見つけることです」

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