第6話 デルタ誕生

「ダサい……本気で言ってるんですか?」

「ああ。本気だ」


 俺の言葉にエルノアが反論する。


「おかしいです! ザ・パワードマンのこのスーツは、アーテラ人にとって格好いい理想のスーツそのものです! これをモチーフにした銅像や人形があるんですよ!」

「そっちからすればそう見えるかもしれないが、このスーツが格好いいと思ってたのはこの映画の監督か、一部のマニアだけだぞ」

「そ、そんな……これがカルチャーショックということですか」

 

 いやいや、エルノアさん? なんでそんなにショックを受けてるの?

 あっ、さっき格好いいとか言ってたよな。


「もしかして、すっごい格好いいと思ってた?」

「思ってましたよ! 今でもそう思いますよクロス・バードル!」

 急にボリュームを上げるな! 耳が痛い!



「なぁ、そろそろ機嫌直してくれよ?」

「……」


 あれから30分。

 こんな調子で反応しないのである。

 

 俺としては、着れるものなら着てみたいが、このスーツを着たいかと聞かれると正直悩む。


 そうえいば、あのスーツの機能面も再現してるんだよな?


 ということは、掌からプラズマショットが撃てたり、手の甲からプラズマソードがでたり、胸中央のリアクターから必殺のプラズマフォースが放てたり、無限プラズマエネルギーを内蔵するシルバーリアクターもあるのか?

 もしそうならワクワクする。


 だったら見た目だけ変えれば、いいんじゃないのか?


「なぁエルノア。このスーツってあのスーツの機能も再現してるんだろ? だったらさ、見た目だけ変えない?」

「……」

「いやほら、せっかくだからさ見た目を変えようよ。これより格好いいスーツを俺がデザインするからさ」

「……本当に、これより格好いいスーツをデザインするんですね?」

「おうよ。それだけは保証しよう」

「……わかりました。いつまでも拗ねている場合ではないですね」

 やったぜ。これで先に進められる。


「ではクロス・バードル。これより格好いいスーツをデザインしてください」



 まず、全体の色を銀色から白にしよう。

 後はどうしようか。せっかくだし昔観てたアニメやロボット、特撮などを参考にしよう。

 全体をスタイリッシュにして、肩と胸の色を……青にして、部分的に赤を入れて、更にワンポイントで黄色を入れて……。

 白、青、赤、黄色の4色で……こんなものか?


 頭の中でデザインしたものを手持ちの紙に描いていく。

 よし、これでいいだろ。


「なぁどうだ?」

「……」

「お~いエルノアさん?」

 あれ、ダサかったか?


「思ってたより格好良かったので少しイラッとしました。いいでしょう、これを元に見た目を変更します」

 褒めてるのか貶してるのか、わからんねーよ。


 とはいえ、このスケッチを元に見た目を変更してくれるようだ。

 すぐに変更ができるのかな?


「出来ますよ。スーツはナノマシンで出来ているので、見た目や機能の調整がすぐに出来ます」

 その設定も再現してるのね。



 それからエルノアと、あーでもないこーでもないと言いながらスーツを開発していく。

 作業中、俺が思いついた案を採用したり、されなかったりした。

 なんだか一緒におもちゃを作ってる感じがして、とても楽しかった。



「出来ました! シルバーメタルスーツに変わる新たなパワードスーツです!」

 

 か、格好いい。

 俺が想像した何百倍格好いい。

 こころなしか、エルノアも喜んでる気がする。


「クロ・スバードル、いえマスター。今この瞬間からあなたはこのパワードスーツとこのコロニーと、そして私のマスターです」


 マ、マスター? 一体どういうことだ?


「早速ですがマスター、このスーツの名前を決めてくれませんか?」

「スーツの名前?」

「Type-EX-E-Vでは、言いにくいと思うので」


 マスターってのが気になるけど、今は後回しだ。

 

 スーツの名前か。確かにType-EX-E-Vタイプ・イーエックス・イー・ブイは言いづらい。

 いい名前を考えよう。


「そうだな……俺とエルノアと、このスーツ……立ち位置がちょうど三角形なんだよな……三角、三角形……お、デルタ。デルタなんてのはどうだ?」


 恐る恐るエルノアに提案してみる。


「デルタ……ですか。文字が短く、それでいて響きが良い……。パワードスーツType-EX-E-V 『デルタ』。はい、このパワードスーツは『デルタ』に決定です」

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