第5話 自称格好いいパワードスーツ

「今の説明で納得してくれましたか?」

「……ああ、なんとか」


 衝撃的な内容だった。


 当時のアーテラの人達の気持ちは、正直分からない。

 だけど、異世界の娯楽に希望を見出してたからこそ、それを何かしらの形に残したかったという気持ちは分かる。



「ところで、こちらから質問をしても?」

「なんだ?」

「あなたの名前を教えてくれませんか?」


 名前か。そういえば教えてなかった。


「俺の名前はクロス・バードル。この星、エスティバの生まれで、前世は地球人だ。そっちは?」

「私の名前は、エルノア。アーテラ星の惑星移住探索コロニー『ノア』と、パワードスーツ『Type-EX-E-V』の管理用自律型AIです」

 コロニーとパワードスーツの管理用自律型AIね。


 うん?

 パワードスーツ?


「なぁ、今パワードスーツって言った?」

「はい、パワードスーツです」

「なんでそんなものがあるんだよ」

「未知の外敵と接触しても戦えるようにですよ。それにパワードスーツっていう響きは、人にとって格好いいと認識しています」

「格好いいってお前な……。まぁ俺も格好いいと思うし、好きだけどさ」

「そうでしょう! やはり地球人は分かっています!」


 地球生まれの人が全員そうだとは思わないけど。


 つか、すっげー喜んでるな。

 声だけでもわかる。

 長年予想していたことが当たったような感じだ。


「私達がこの星にやってきた話よりも、パワードスーツの方が反応がいいですねクロス・バードル」

「そ、そんなことはないぞ。いや~大変だったんだなって思ってるよ」

「本当でしょうか? パワードスーツと聞いた途端、明らかに表情が変わりましたが? ちなみにあなたの表情は、管制室にある数10台の隠しカメラでチェックしています」

「み、見間違いだよエルノア君。多分幻影だよ、幻影」

「ふ~ん、そういうことにしておきましょうか」

 このAI、やけに鋭い。


「とりあえず、あなたが気になってるようですし、早速ですが私達が作ったパワードスーツをお見しましょう」

 よ、待ってました!


「本当にわかりやすい表情ですね」

 聞こえない聞こえない。きっと幻聴だろう。



 管制室の下から何かが上がってくる音が聞こえる。


 ガシャン。 

 俺の目の前に、1体のパワードスーツが現れる。

 人の全身を覆うパワードスーツ。

 これを着て外敵と戦っていたのか。これを着て? 本当に?


「どうでしょう、クロス・バードル! この造形、このフォルム……これこそまさしくあなた方人が……特に地球人が大好きなパワードスーツでしょう!」

 エルノアのテンションが一段と高い。高いが……。


「これ、映画『ザ・パワードマン』に出てくるパワードスーツにそっくりじゃん」

 思わず表情が凍りついた。



 ザ・パワードマン。

 主人公がパワードスーツ『シルバーメタル』を着て悪と戦う、勧善懲悪のヒーロー映画だ。

 ストーリーよし、演出よし、展開よし、と世間でも高評価な映画だが、そんな映画にも一つだけ欠点がある。

 それは、スーツの色が全身銀色で工業製品に見えてダサいことだ。


「なぁ、これ本当に格好いいと思ってるの?」

「当たり前ですよ! このフォルム、内部機能! そしてなんと言っても……全身銀色の所! 惚れ惚れしませんか?」

「いや、しないよ」


 完全再現されたこのスーツ、本当にダサい。

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