第2話 初めてのダンジョン探索
「許可書の確認が終わりました。ダンジョン探索を許可します」
「ありがとうございます」
冒険者ギルドの受付嬢に、ダンジョン探索の許可書を提出した。
その紙に、自分の氏名や出身地などを記している。
この紙を出さなくても探索はできるが、ギルドを通した方が、万が一の場合に備えることができる。保険みたいなものだ。
冒険者ギルドを出発し、ルーヴィルタウンの東門を抜けて約1時間。
ギルドが管理するダンジョン「ルーヴィルのダンジョン」に到着した。
周りは木々に囲まれており、ダンジョンの入り口までの道は舗装されている。
ダンジョンによって入り口が様々だが、ルーヴィルのダンジョンはオーソドックスな洞窟みたいな入り口だ。
探索できる範囲は小さめで、財宝や古代文明の遺跡などはないが「冒険者が初めてダンジョン探索をするなら、ルーヴィルのダンジョン」と言われるほど初心者向けのダンジョンである。
ただ、最近は初心者向けの講習や訓練が充実しているので、ここに訪れる人は少なくなっている。
「準備は大丈夫。それじゃダンジョン内部に行きますか」
気合を入れ、ダンジョン内部へと進んだ。
周りは岩に囲まれているが、ダンジョン内部の道が舗装されたり、階段などの人工物があるのであまり苦労することはない。
もちろん、スライムやゴブリンなどの魔物がいるので、そいつらを倒しながら慎重に進んでいく。
ちなみにダンジョンを探索する際、ギルドからある依頼を受けている。
それは「ダンジョンの奥にある探索証明のスタンプを右手に押してギルドに帰還する」だ。それ自体は難しいことではないし、ソロでも出来る。
スタンプがある最終階層に到着した時、俺の目の前に一匹のスライムが現れた。
おかしい。
スライムは半透明で青色。地域や環境によって透明度や色が変わるが、ここに生息するスライムは全て半透明で青色なはずだ。
なのにこのスライムは透明ではないし、色が銀色なのだ。
透明ではなく色が銀色……であれば、メタルスライムやアイアンスライムが予想できるが、このダンジョンにはそいつらが主食となるような鉱物がない。
だから、ここに銀色のスライムがいるのはおかしいのだ。
そう思っていると、そのスライムと目が合う。
気づかれた。
謎のスライムを倒すために、鞘から剣を抜こうとする。
だが、スライムはこちらを見てもゆっくり振り返り、慌てて逃げることもなく、別の方向にゆっくり進んでいく。
まるで俺を導いてるかのように。
奇妙な動きだ。
普通、スライムであれば攻撃するか逃げるかの二択だ。
だがこのスライムはそういったことをせず、ゆっくりと進んでいる。
スライムが進んだ先に何かがあるかもしれない。
罠の可能性を考えつつ、スライムの速度に合わせて俺も進んでいった。
奇妙なスライムに導かれること、約1時間。
行き止まりか。
周りを見渡しても相変わらず岩である。
罠や魔物がいないか警戒していたが、このスライム以外の気配を感じない。
あれ、スライムがいない。
周りを見渡した時に消えたのだろうか?
それにしても、なんだろうこの場所。
周りの岩だが、なんとなく偽装してる感じがする。
ここまで綺麗な行き止まりを見たことがなかったし、なんとなく不自然なのだ。
「気になるけど、行き止まりなのは変わりないか」
不自然さを感じつつも周りは岩ばかり。
これもダンジョンの洗礼……と思うしかない。
そろそろ戻ろうかと思ったが、こういう時にあの言葉を言えば何かが起こるんじゃないのか、と思った。
「え~とたしか……そうだ。『開けゴマ』だ」
我ながら馬鹿なことしているなと呆れていると。
「『開けゴマ』……異世界、地球の言葉と推測……。地球の言葉だと確定。カモフラージュを解除し、対象の人物を案内します」
こ、声?
一体どこからだ?
もしかして行き止まりの岩からか?
困惑しているうちに周りの岩が、SFの映画で見たことあるような、宇宙基地にありそうな壁に変化していく。
さらに目の前の岩が消えている。
「そこの人。怪しいと思いますが、私の声に従って奥まで来てください。事情を説明しましょう」
いや、事情を説明しましょうってなんだよ。
こっちは目の前の光景で頭がパンクしそうなんだぞ。
「あの~大丈夫でしょうか? 私の声が理解できますか?」
「理解しているよ! というか一体何なんだここは!」
「ここは? なるほど、今いる場所から説明しないといけませんね。失礼しました。ここは惑星移住探索コロニー『ノア』の入り口です」
い、今なんて言った?
惑星移住探索コロニー、ノア?
入り口?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます