第1章 ルーヴィルのダンジョン
第1話 異世界転生と理想のファンタジーライフ
ここはどこだ?
目が開かない。
真っ暗だ。
あれ……意識がある?
というか、今まで何してたっけ?
確か……道路に飛び出した子供を庇って車に轢かれて……。
そうだ、車に轢かれたんだ。
それも思いっきり。クリーンヒットレベル。
でも、なんでまだ意識があるんだ?
こういうときは走馬灯が見えるんじゃないのか?
おい、30年生きてきて楽しい思い出や辛い思い出とかを見せろよ。
暗闇のなかで、こうやって死ぬのは嫌だぞ。
……おかしい。まだ意識がある。
「~~~!、~~ス!」
誰かが呼んでいる気がする。
「~ロスちゃん! クロスちゃん!」
いや、呼んでいる。
ちゃん付けなのが気になるけど、この声に応えないといけない気がした。
必死に目を開けようとするが、まぶたが重たい。
でも、ここで諦めるわけにはいかない。
そして……。
「ぎゃー!(はい!)」
あれ、泣いてる?
俺、今泣いてる?
赤ちゃんになってる!?
まずは状況を整理しよう。
俺園崎裕也。30歳。男性。独身。
東京のIT会社に務めるプログラマー。
付け加えるなら、アニメやロボットのプラモデル、リアルヒーローに特撮モノが同世代よりチョット好きな、ただのオタクだ。
あの時、道路に飛び出した子供を庇い、車に轢かれて死んだはずだ。
でも、こうして生きているし、今いるのは地球の病室……ではないな。
ちなみに、俺のことを「クロス」と呼んでいた男性と女性は俺の父親と母親らしい。
つまりだ。
車に轢かれたと思ったら、気がついたら異世界に転生して赤ちゃんになったわけだ。
それから18年。
色んな出来事があった。
その間の出来事を思い出すとかなり長くなるんで、また別の機会に振り返ろうと思う。
そうだ。
俺が転生したこの世界について。
俺が転生した世界、エスティバ。
魔法が発達し、人、獣人、エルフ、ダークエルフ、ハイオーク、ハイゴブリン、デビル、エンジェル族など、あらゆる人種、種族がいるファンタジーな世界だ。
そして俺も含めてだが、異世界転生人や異世界転移人など、通称異世界人の存在が広く知れ渡っている。
この世界を作ったのが異世界人だ、という説があるぐらいだ。
とは言っても異世界人は珍しいらしく、町や大陸によっては崇拝されたり、差別されたりする。
ただ、俺が住んでいるルーヴィルタウンのように「異世界人だろうと関係ない」という考えが主流だから、自分のことを異世界人だと言いふらすことはしない。
そんなエスティバには、ファンタジーな世界におなじみなダンジョンが存在する。
ダンジョンには数多の財宝や古代文明などが存在すると言われている。もちろんエスティバも例外ではない。
更にエスティバのダンジョンには、ワールドウェポンがある。
ワールドウェポン。
エスティバ、つまりこの世界が作った武器。それを初めて聞いた時、ロマンあふれる設定だと思った。
でも、ここはファンタジーな世界だ。
俺が知っている地球の知識や常識が、時として無意味なものになる、そういう世界だ。
ワールドウェポンの存在を知った俺は、人一倍魔法の訓練や武器の扱い方を学んだ。
全てはワールドウェポンを手に入れるため。
そして自分の夢を叶えるため。
この世界を冒険者として生き、時には戦い、時にはスローライフをおくり、そしてダンジョンでワールドウェポンを手に入れる。
ありふれたものだけど、それが俺にとっての夢であり、理想のファンタジーライフだと思った。
出発の日から約一ヶ月前。
初めてのダンジョン探索に向けて、俺はルーヴィルタウンの冒険者ギルドに行ったのである。
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