ファンタジーな世界だけど、俺はAIとパワードスーツで行きます

もんざえもん

プロローグ

プロローグ 出発の日

「今日が快晴でよかったですねマスター」

「そうだなエルノア。絶好の出発日よりかな?」



 木や雑草が一切ないように整理された森の一画に、俺クロス・バードルは相棒のエルノアと共に、アデス大陸に向けて、パワードスーツ『デルタ』の最終調整を行っている。



 異世界に転生して18年。

 転生前の地球での人生を合わせると48年。

 色んなことがあったが、ここ1ヶ月弱の出来事は今まで生きてきた中で一番濃ゆい出来事だった。


 まさかファンタジーな世界に、SFやリアルヒーローモノの映画で見るようなAIやパワードスーツがあるなんて。


 でも、魔法で空を飛ぶのもいいけど、パワードスーツを着て空を飛んだり戦ったりするのも憧れていたし、深く考えないようにしたほうが……いいのかな?


 そんな風に少し考えていると……。


「……スター? マスター?」

「ごめんごめんエルノア。ぼーっとしてた」 


 エルノアの声で現実に戻る。

 今は考え込んでる時ではない。デルタの調整をしないと。


「そうですか……なんとなく今までの人生を振り返ってるようでしたが?」

「お前なんでわかったんだよ? バイタルチェックでもしたのか?」

「いいえカンですよ。カ・ン」

「カンってお前なぁ……。本当にただのAIか?」

「確かに私は、惑星移住探索コロニー『ノア』と、パワードスーツType-EX-E-V『デルタ』の管理用自律型AIです。ですが」

「ですが?」

「それだけではありません。私はあなたの仲間です」

 

 予想外の言葉に思わずドキッとする。

 AIとはいえ、面と向かって「仲間」なんて言われるなんて。


 いや待て。

 こいつは自律型AIのエルノア様だ。

 ここで良い感じに言って、俺をもちあげようとしてるな?

 

 あ!

 よく見ればこいつドヤ顔してる。


「お前、ドヤ顔してるぞ」

「そうでしょうか? 頭部モニターに私の顔が映っていると思いますが、元々こういう顔だと思います」

「そういうことにしておくよ」


 会話を切り上げて中断していた作業を再開する。

 厳密にはパワードスーツ『デルタ』の調整だけど。

 それに、これ以上エルノアと話しても、良い感じに言いくるめられる気がする。



 どうしてこうなったのやら。


 頭部モニターに映るエルノアに、恨み言の1つや2つ言いたくなる。


 でもやっぱり……デルタというか、このパワードスーツは格好いい。

 なんたって俺がほとんどデザインしたからな。

 デザインは俺、そして性能はエルノアが担当しているから問題ないんだろう。



 とはいえ、なんでこんな事になったのやら。


 こうなる前の出来事を振り返ってみるか。

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