第21話 滋賀県近江八幡市 7
結局、その日ドラゴンは恥のあまり一日中琵琶湖から出てこなかった。
というわけで、急遽ジュリエットと羽柴秀次のゴーストと共にキャンプをすることになった。
流浪の旅人、エルフ、嘗て近江八幡の領主だった男のゴースト。
何とも奇妙な三人でキャンプである。
尚、周囲には他にも家族連れがキャンプをしていた。琵琶湖湖畔はそれなりにキャンパーが多いキャンプ地なのだ。
さて、ジュリエットがなんか近江牛を買ってくれたのでそれをたべることになった。
というか、どうもジュリエットは近江牛の牧場を経営しているらしい。
「肉と果実はエルフにとっての必需品だ」
肉を取り出しながら、ジュリエットはそのように言った。
「あの愚妹から聞いていると思うが、果実は我々を狂わせ肉はまともに戻す。エルフとはそのような生き物なのだ」
そういいながら、ジュリエットは奇妙なナイフで肉を切っていた。
「なるほどな、我々人間のイメージとしてはエルフは肉を食べないイメージだったんだがな、いろいろと新しい発見だよ」
そういうと、ジュリエットが笑う。
「ははは、以前にも似たようなことを言われた。どうやら、こちらの人間からすると我々が僧侶のように見えるのだろう」
慣れた手つきで肉の塊を切り分けていくジュリエットは、炭の上に肉を置きだす。
肉が焼ける匂いがする。
いい匂いだ。
「まぁ、食いながら話そうか」
「そうだな」
私たちがそういった時である。
「こうやって人もエルフも、ゴーストをないがしろにするんだ……俺、悲しいわ」
羽柴秀次は拗ねていた。
日本異界風土記 ~日本における異世界との共生論~ 文屋旅人 @Tabito-Funnya
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