第16話 滋賀県近江八幡市 2

 さて、新奈良駅から奈良駅まで歩きそこから近江八幡へ向かう。

 奈良線の車内で私とジュリエットは隣に座る。

「妹が世話になった。久方ぶりに肉を大量に食えたことに感謝していたぞ」

「そうか」

 何だろう……乗車早々言うことがそれなのか……。

「というわけで心ならぬ礼だ。食え」

「む……」

 なんだろうか、このところどころ日本が間違っているが故のイラつきは。なんというか、大五郎よりも発音が正しい分余計にいらいらする。

 で、このジュリエットが渡したものは……緑色の箱のようなもの、否、私は正体を知っているのだが……まさかエルフからこれを渡されるとは思わなかった。

「好きなのか、柿の葉寿司?」

 ジュリエットに問いかけてみる。

「無論だ。これは美味い、奈良の海の幸は最高だ」

 ……このエルフ、奈良を豪快に誤解している……。

 奈良に、海はない。

「これ、魚自体は別のところから取ったんだぞ?」

 そういうと、ジュリエットは目を開く。

「なんと! これは大和川の幸ではないのか!?」

 ……頭を抱える。

 大和川に、鯛はいねぇ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る