第11話 埼玉県さいたま市 6

 さて、焼き肉屋をこっそり出てなぜか私はエルフの女と二人で、雑居ビルの多目的トイレに入った。

「……これ、エルフの秘密……見ておくです」

 私から少し離れて、大五郎は十万石饅頭をたべた。

 その時である。



「にょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」




 細いのどから、異様な奇声が沸き上がる。

 目がグルんと白めになり、がくがくと足が震えだして大五郎の股から尿が漏れ出した。

「っ!」

 私は即座に毒を疑った。

 だが、大五郎は手を横に振りながら奇声を上げる。

 ……要するに、心配はいらないということなのか?

 神を振り乱しながら、一分ほど叫んだ後、大五郎は顔を真っ赤にしながら、体液でびしゃびしゃになった服のまま、便器に座り込む。

「はぁ、はぁ……アケケム」

 息も絶え絶えに、何か聞き覚えのない言葉をつぶやく。すると、大五郎が十万石饅頭をたべた後から噴き出したもろもろの液体がきれいに消えた。

「……すまない、いろいろと聞きたいことがあるんだが……今のは何だ?」

 すると、大五郎はすぅと深呼吸をした後にこたえる。

「アケケムは……液体をマナに溶かす……乾燥機の呪文版です……ふぅ」

 ……すごいな、でも今はそのアケケムの呪文よりもいろいろと聞きたいことがあるんだ……。

 

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