第10話 埼玉県さいたま市 5

 さて、そんな面白いエルフの社会が分かったところで本題だ。

「本来の話を始めよう。今現在全国津々浦々にエルフたちがいる。彼ら彼女らはたいてい、菓子店でバイトをしているがそれはなんでだ?」

 事実、記憶を思い出すとエルフは地元の菓子店で働いている場合が非常に多かった。

 それが何故かを問うと……思いもよらない答えが飛んできた。


「私たちはトリップしたいのだ」


 いきなり訳の分からない言葉を投げかけられた。

「……トリップ?」

 すると、大五郎はコクリとうなずく。

「十万石饅頭くださいです」

 急に、十万石饅頭を渡すように言われた。

 私はカバンの中に入れた十万石饅頭を一つ、取り出す。

 大五郎は周囲を見渡す。この店、大宮駅前だからそれなりに繁盛している。すると、急に大五郎は立ち上がる。

「来て」

 その眼は、なぜかすごく恥ずかしそうであった。

「どこに向かうんだ?」

 私はものすごく不安になった。


「多目的トイレ」


 もう嫌な予感しかしなくなった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る