第39話夢
意識を取り戻したものの、まだ立ち上がれずにいる黄金の髪をした女性に空美は治癒の能力を使う。
手のひらから発せられる治癒の光りをその豊満な身体を持つ女性に当てていくと、青ざめた色をしていた頬にうっすらと血の気が戻っていく。
なんて、綺麗な人なんだろう。
空美は治癒の術を使いながら、そう思った。
「ありがとう、お嬢さん」
しっとりとした声でその女性は礼を言った。
竜馬の手を借りて、たちあがった。
立ち上がって初めてわかったのだが、女性にしてはかなり背が高い。獅子雄と同程度あるだろう。それにかなりボリュームのある肢体をしていた。
おもわず、空美は見とれてしまった。
彼女は春香の前で膝をつく。
深々と頭を下げた。
「陛下、お救いいただき、まことにありがとうございます。わたくしは風と知をつかさどる博士グシュナサフともうします」
金色の髪をした女性はそう名乗った。
続いて、ラルヴァンダードがグシュナサフの左にひざまずく。
ホルミスダスは右にひざまずく。
「我ら東方三博士は、陛下に愛と忠誠を誓います」
三人のそれぞれに美しい女性たちは、そう言った。
第三ステージクリアしました。
天王寺春香に「三博士の主人」「バベルの塔の管理者」「武神の盟友」「迷宮の踏破者」「ダビデの血族」の称号が与えられました。
貝塚獅子雄は固有特技「一刀両断」を獲得しました。
難波零子は固有特技「鉄鎖術」を獲得しました。
岸和田美穂は固有特技「剣技三ツ星」「火炎の矢」を獲得しました。
岬空美は固有特技「ヤコブの血界」を獲得しました。
岬海斗は固有特技「千里眼」を獲得しました。
住吉竜馬は固有特技「禹歩」を獲得しました。
幻影都市に「三博士の研究室」が増設されました。
クリア特典として、小型移動挺「マタイ」が使用可能となりました。
次元の扉が解放されました。
きがつくと、岬海斗は見たことのない宮殿のような場所にいた。
バベルの塔を攻略し、コテージの部屋で休んでいるはずであったのだが。
そこは光り輝く、神聖な空気が漂う、そんな場所であった。
大理石の床がどこまでも続いているように感じられた。白い、石の柱は傷一つついていない。
一人の人物が首をきょろきょろさせ、誰かをさがしている。
よく見ると、それは妹の空美であった。
空美は海斗の姿をみつけると、にこりと微笑み、彼のもとに駆け寄った。
勢いよく飛びつき、両手をまわし、抱きつく。
そのあまりの勢いのため、海斗は後ろにふらついた。
妙な違和感を海斗は感じた。
愛らしい妹の背中に白い羽が生えていた。
その羽がピクピクと動いていた。
その動きは、嬉しいという感情のあらわれのように見えた。
西洋の宗教絵画によく描かれる天使の姿そのままだった。
「兄上様、こんなところにいらしたのですね。ミカエルは聖殿内をさがしまわったのですよ」
頬をふくらませながら、空美は言った。
「ほら、これは天罰です。兄上様、かがんでくださいませ」
空美がそう言うので、海斗はしかたなく膝を少しまげた。
「よろしい、愛する兄上様」
柔らかい感触が頬に伝わる。空美は海斗の頬に口づけをしていいた。
そこで、海斗は一度眼をさました。
彼の隣には空美が静かに寝息をたてていた。
どうやら、自分は夢をみていたようだ。
いくら、妹を可愛がってるとはいえ、自分の妹を天使として夢に登場させるとは……。
海斗は一人、自嘲した。
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