第27話強制転移
意識を取り戻した褐色の肌の少女はきょろきょろと周囲を見渡す。
春香と目が合うとにこりと微笑んだ。
「ありがとう、王様」
その声はあの脳内に聞こえたものとまるっきり同じだった。
「君が三博士の一人、ラルヴァンダードだね」
「うん、そうだよ、王様」
春香の問いにそう答えると褐色の肌の少女は勢いよく抱きついた。
「なあ、大将。その娘、素っ裸なんだがなんとかならないか」
目のやり場に困りながら、竜馬がきいた。
ラルヴァンダードは竜馬のい言う通り、一糸纏わぬ姿であった。形のよい胸のふくらみやアスリートのように引き締まった肢体もすべて丸見えだった。
蜘蛛の糸が少しあまっているから、その娘のために衣装をつくってあげるわ。
スマホを見ると、魔女アラクネーからのメッセージが流れていた。
「天女の羽衣」がアイテムボックスに追加されました。
春香の手に柔らかな白い布でできた羽衣が出現した。
それをラルヴァンダードに手渡す。
「これ、着た方がいいの。あたしは別に王様がこっちのほうが好きなら、このままでいいけど」
「いや、さすがにそれは困るよ。お願いだから、服をきてくれないかな」
春香がそう頼むとラルヴァンダードはわかったわといい、羽衣を身にまとった。
エキゾチックな風貌のラルヴァンダードであったが、その衣装は良くにあったていた。人ではない神々しささえあった。
私のデザインだからね、そりゃあそうよ。
アラクネーのメッセージが流れる。
「残りふたりのあたしのお姉さんも助けてちょうだい、王様」
天女の羽衣を身ながら、ラルヴァンダードは言った。
「もちろんだよ。それがステージクリアの条件だからね」
春香は言った。
「リヴァイアサンゲームか。この星の神様も意地がわるいわね。あたしたちはイレギュラーみたいなもんだからね、たぶん、それでえらばれちゃったんだよ。王様」
うふふっとラルヴァンダードはくるくると回った。
「東洋の衣装か。悪くないわね」
と言った。
「博士っていうからてっきり男かと思ったけど、そうじゃないんだな」
じろじろと零子はラルヴァンダードの健康的な体をみながら、言った。
「そうだよ、あたしたち三博士はこの星の住人の特徴をもとに前の王様によって、創られたんだよ」
「創られた?」
詳しく海斗がきこうとするが、それを遮るようにラルバンダードの銅色の瞳が険しくなった。
「話は、あとで。なんかあやしいよ」
ミノタウロスの死体を指差し、ラルヴァンダードは言った。
「兄さん、あれ。あの死体から血が流れていく」
同じ方向を空美も見ている。
ミノタウロスの両肩と首の傷口から血が止めどなくあふれ、流れていく。そのどす黒い血液はミノタウロスが出現した魔法陣に流れていく。血液は魔法陣をなぞり、新しく血の魔法陣を形成していく。
それが瞬時に光だし、そのまぶしいほどの光は室内をおおっていく。
その光を見た瞬間、春香は意識を失った。
「王様、王様。しっかりして」
ラルヴァンダードの声がかすかにきこえる。
だんだんとその声がはっきりと聞こえるようになる。
目を開けると、ラルヴァンダードの目鼻立ちの整った顔が見えた。
「ここは……」
「別の階層に飛ばされたみたい。あたしたちトラップにひっかかったみたいなの」
「トラップって」
「あのミノタウロスを撃破すると発動するように設定されてたみたいなの」
ラルヴァンダードの手を取り、春香は立ちあがる。
「そう、君たちはばらばらに飛ばされたのだよ」
最初、闇が喋っているのかと思った。
だが、そうではなかった。
闇のように黒いマントを羽織った人物がそこに立っていた。つば広の帽子を頭にかぶり、サーベルを腰にぶら下げている。
「ようやく、あえたね。春香君。トラップによって善き盗賊ディスマの監視をのがれることができたのが幸いしたようだ」
その声は聞き覚えのあるものだった。
声の主はサンジェルマン伯爵のものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます