第26話救出
ぐおおおっと腹を切り裂かれえながらも、ミノタウロスは雄叫びをあげる。両手でつきささった戦斧を引き抜こうとする。
とんと美穂は後方に飛び、着地する。
傷口の奥には褐色の肌の少女は眠ったままだ。
「あそこにいるのが、もしかして三博士の一人なのかな」
美穂は言った。
「きっとそうに違いない」
次の攻撃に警戒する獅子雄に春香は語りかける。
「獅子雄、お願いだ。彼女を助け出して」
それはずるい言い方だと獅子雄は思った。
きっと春香は計算とかそういうのではなく、自然に囚われた少女を助けたいという気持ちで言ったに違いない。
こんな風にたのまれたら、獅子雄は断る術を知らない。
獅子雄は春香の願いなら、犯罪でないかぎりなんでもするつもりでいた。
獅子雄の春香への感情は友情以上の特別なものであった。それは獅子雄本人しか知らないことである。
「わかった」
短く獅子雄は答える。
腹を切り裂かれ、ミノタウロスは確実にダメージを受けている。ではあるが、まだまだ戦意をうしなっていないようだ。
「やる気まんまんじゃねえか」
そう愚痴るのは竜馬であった。
巨大な戦斧を頭上にかかげ、春香らを殲滅すべく突撃を開始する。
ごおおっと耳をおおいたくなるほどの巨声をミノタウロスはあげる。
必殺の一撃の構えも美穂にとってはすきだらけに見えた。
はやくもかの柳生十兵衛の教えが生かされつつある。
抜刀の構えをとり、左側にまわる。
「右、お願いします」
軽やかに駆けながら、獅子雄にいった。
「オーケー‼️」
豹の剣を強く握りなおし、彼は右側に素早く回り込む。
深く息を吸い込み、美穂は
凶悪な戦斧が降り降ろされるまでに、それよりも速く剣撃を繰り出す。菊一文字は正確無比に左肩に刃が走る。
美穂は見えていた。
自分の攻撃する予定の所が赤い線となって空間にはしることを。あとはその線にそって菊一文字を走らせるだけである。
菊一文字は見事、左腕を吹き飛ばし、完全に切断した。
固有特技突撃を発動させ、獅子雄は攻撃を繰り出す。豹の剣を渾身の力をもってたたきつける。単純な攻撃であったが、それこそが獅子雄の持ち味であった。小細工などせずに相手を正面から完膚なきまでに叩き潰す。
右脇に突き刺さった豹の剣を一気に上方に引き上げる。戦斧をもったまま右腕は空中に吹き飛ぶ。
轟音をたて、戦斧を握ったままの右上が床に転がる。
ギィヤアアア。
怪物の悲鳴が鳴り響く。
「竜馬さん、今だ」
間髪入れず、海斗が竜馬にいう。
「あいよ」
竜馬はそう答える。
両手を傷口に突っ込み、褐色の肌の少女を一気にひきだす。足を胴体にかけ、引き出すと少女をかかえ、後ろに飛び退いた。
「とどめだ」
短く美穂はいうと剣技流星を発動させ、ミノタウロスの首に菊一文字を切りつける。ミノタウロスの首はごろごろと床にころがり、怪物は動かなくなった。
ミノタウロスを撃破しました。
三博士の一人、ラルヴァンダードの救出に成功しました。
天王寺春香に「牛鬼の主」「迷宮の探索者」の称号が与えられました。
貝塚獅子雄は固有特技「獅子奮迅」を獲得しました。
岸和田美穂は固有特技「見切り」を獲得しました。
岬海斗は固有特技「炎の加護」を獲得しました。
ドロップアイテム「牛鬼の角」「牛鬼の骨」「巨人の戦斧」をアイテムボックスに送ります。
「うっうう……」
呻き声をあげながら褐色の肌をした可憐な少女は意識を取り戻そうとしていた。
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