第24話迷宮探索
塔の中は薄暗かった。
壁や床に光る苔が生えているおかげで、おおよそ五メートルほど前方まではどうにか見ることができた。
道幅は三メートル強といったところだろうか。
壁も床も石造りなのが幸いだ。
とても歩きやすい。
歩きやすいとはいえ、慎重に進まなくてはいけないのはたしかであった。
海斗の提案で前衛と後衛の二列で進むことになった。
前衛は獅子雄、竜馬、零子がつとめる。
後衛は春香を挟み、海斗、空美、美穂がつとめる。
「しかし、このバカでかい塔の中にいるという博士とやらを見つけるのは骨がおれるな」
竜馬がぐちをいう。
「確かにそうですね」
春香も同意見であった。
ある程度進むと最初の敵に遭遇した。
山羊の頭に人身の怪物だった。
肌は浅黒い。
焦点のあっていない黄色い瞳でこちらを見ている。
「出たな」
ホルスターから魔銃フェンリルを抜き、零子は即座に射撃する。
弾劾は風を切り裂き山羊の頭に命中する。
額を撃ち抜き、怪物は後方に倒れた。
やったかと思われたが山羊の怪物は、ねっとりとした血液を撒き散らしながら立ち上がり、襲いかかる。
かっと口を大きく開けると山羊の怪物は黒い煙を吐いた。
前進し、獅子雄はミスリルの盾で煙を防ぐ。
獅子雄は
さらに突進し、豹の剣を首筋に叩きつけた。
山羊の頭だけが天井に吹き飛び、次に床に転がった。人の体だけになった怪物は後ろに倒れ、動かなくなった。
ドロップアイテム「悪魔の角」「バフォメットの書」をアイテムボックスに送ります。
この後、幾つかの魔物に遭遇するがそのすべてを撃退することに成功した。
迷宮をさらに進むと春香たちは階段を発見した。
階段を上り、迷宮を進む。
一度通った通路は海斗が完璧に覚えているので、迷うことはない。
「すごい記憶力ですね」
美穂が感心する。
「なに、たいしたことないよ。昔から記憶力だけは自信があったんだ。運動は自信ないけどね。君も白鈴高校の生徒だろう。僕よりもずっと能力はたかいはずたよ」
海斗は美穂の制服を見て、言った。
勉強はできても、それを実際に生かすことはその本人の能力次第である。本当に頭のいい人というのは海斗のように危地にあって冷静に対応できる人間のことだと美穂は思った。
階層を五つほど上がった彼らは、回廊の突き当たりにある鉄の扉を発見した。
「こいつはなにかあるね」
鉄の扉を見ながら、零子は言った。
「で、どうする?」
零子は春香に問いかける。
春香はうなずいた。
ここで足踏みしていてもしかたない。
もしかするとこの奥にはなにか罠が仕掛けられているかもしれない。
だが、進まなければステージはクリアできない。
「皆、気を付けてください」
その言葉を合図に獅子雄が扉をあける。
一番防御力の高い彼が先頭をきる。
扉の奥はかなりの広さであった。バスケットのコートほどの広さがあろうか。
中心に複雑な紋様の魔法陣がえがかれている。
その魔法陣が輝きだし、一体の魔物があらわれた。
ゆうに二メートルはあろうかと思われる巨体を誇る怪物であった。人の体に牡牛の頭の怪物であった。
手には巨大かつ凶悪な戦斧が握られている。
「今度はミノタウルスか」
盾と剣を構え、獅子雄は言った。
「やっと来てくださいました。王様、助けてください。あたしはラルヴァンダード。この牛の悪魔のなかにとじこめられているの」
少女の声が春香の頭のなかに響いた。
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