M・Romance




それさえも笑い合った





【前書き】

このストーリーは会話だけで構成されています。







「なぁなぁ、藍利あいり、あそこにいる長い黒髪でさ、ブルーのチェックのスカートの女子高生っぽい女の子、可愛くね?」


「えっ、何処?」


「ほら、あそこ」


「ん〜、んん?」


「向かいに同じ制服のやつがいんじゃん」


「あぁ、あの子ね。うん、確かに。」


「だろ?」


「声掛けてきたらいいじゃない。」


「ばっか、ぜってー向かいの奴に睨まれるって。」


「相変わらず危険察知能力だけは高いのね。てかそもそも魁利かいり、今彼女いんの?」


「ん〜固定の子は居ないけど。」


「この間一緒にいた茶色っぽい色でボブの子は?」


「あー、美波?あれはセフレ。」


「黒髪でポニテしてる子は?」


「夏樹?セフレ。」


「ベリーショートの小柄な子は?」


「弥生は元カノ。」


「じゃあ薄いピンクっぽい色でふわふわしててよくロリータワンピ着てる子は?」


「あー、あいつは…多分ストーカー…?」


「それでいて私とこうやってハンバーガーなんか食べてるの?」


「食いたいって言ったのは藍利だろ。」


「確かに言ったけど。魁利、そのうち刺されるわよ。」


「それは怖いな。」


「それよりも先に私の方がそのストーカー…?みたいな子に刺されるわね。」


「そん時は守ってやるさ。」


「当たり前じゃない。そんな理由で死ぬのなんてゴメンだわ。」


「それより、藍利は?」


「なにが?」


「彼氏。」


「居ないわよ。」


「なんだ、そっちはそんなに忙しいのか?」


「忙しいわよ。授業と課題とバイトに追われて彼氏作るヨユーなんてないわ。」


「大変だな。」


「大変よ。あ、ポテトなくなっちゃった。魁利、ジャン負けね。じゃーんけーん」


「ちょっ、はぁっ?」


「ぽい!やりぃ!私の勝ちね。」


「ずるいだろそんなの…」


「ずるくないわよ。Lサイズね。」


「へーへー。小銭あったかな…。」


「(にしてもあんなにいっぱい女の子引っ掛けちゃって。昔はもっと可愛げがあったというか。女の子達も気の毒ね。顔に騙されてるわ、きっと。でもたしかに昔から人たらしな所はあったか…。全く、見上げた根性よ。私のは。)」


「ほらよ。」


「ありがと、って、流石私のね。3つも買ってきてくれるなんて。」


「セール中だからな。てか、こんなに食えんのかよ。」


「食べれるわよ。ここのポテトは好きだからね。」


「そーかい。」


「あの〜すみません、」


「?」


「お兄さんとってもイケメンね!良かったら一緒に遊び行かない?」


「あーっと…」


「(こっち見ないでよ)…彼に、何か用?」


「あら、彼女いたのね。それじゃまた今度。」


「…藍利ナイス。」


「私は魁利の虫除けじゃないわよ。」


「今のは別に好みじゃなかったし。なんつーか、藍利の若さで殴ってた感じ?最高だった。」


「褒められてる気がしないわ。」


「まさか。さすが俺のだなって。」


「ポテト奢ってもらっちゃったし?仕方ないわよ。」


「ポテト恐るべしだな。」


「……てか、魁利は私といて楽しいの?」


「…なんだよ突然。」


「いや、そんなにモテる魁利くんなら私なんかよりもっといい女の人といた方がいいんじゃないかなあと思って。」


「拗ねてんのか?」


「正直羨ましいわ。」


「あのなー、俺は昔からお前しか信頼してないし、お前といんのが1番楽なんだよ。」


「…猫、かぶってんの?」


「そーゆー訳じゃねーけど…なんて言うかな…。こーやってハンバーガー食って、しょーもない話して、都会の街を見下ろして、ってのが好きなんだよ。」


「…何それっ…おかしっ…」


「…笑うなよ!」


「っふふふ…いや、そりゃ彼女出来ないわ。」


「…藍利こそ、なんでわざわざ俺誘ったんだよ。」


「そりゃ、魁利とハンバーガー食べたいな〜って思ったからに決まってんじゃん。」


「あー、こりゃ藍利にも彼氏が出来ねぇ訳だな。」


「当たり前じゃない。私は今でも魁利しか信用してないもの。」


「ったく…しょーがねぇよな。」


「嫌いじゃないでしょ?」


「嫌いだったら来てねぇよ。」


「さっすが。」


「……なぁ、そう言えばさ、さっきからこっち見てる人いるけど、藍利、知り合い?」


「え?何処?」


「ほら、あそこ」


「ん…?」


「紫のスカートのさ。」


「あぁっ!澄玲すみれ先輩?」


「お、向こうも気づいたな。」


「声かけようと思ってたけどお話中だったみたいで迷ってたの。」


「珍しいですね。こんな所で会うなんて。」


「ええ。彼がどうしても、って言って。…彼は藍利ちゃんの彼氏さん?」


「いえ。双子のです。」


「初めまして、いつもがお世話になってます。」


「……!っふふ。やっぱり藍利ちゃん面白いね。」


「?」


「あ、そろそろ行くね。また講義で。」


「はい!また。」


「…しっかしキレーな人だな、すみれ…さんは。涙ボクロ可愛い」


「よくそんなとこまで見えるわね。」


「なるほどな、あれが彼氏サンか…。ったく…悔しいくらいに似合ってんな。」


「…?どの人のこといってんの?」


「ほら、金パで黒いジャケット着てる、背の高い人。」


「ほんとだ。……どっかで見たことあるなぁ…。」


「キャンパスで見かけた、とかじゃないか?」


「いや、うちのキャンパスであんな目立つ人がいたらとっくに話題になってるわよ。」


「そうか。」


「んー、思い出せないわ。まっ、そのうち分かる気がするからいっか。」


「相変わらず楽天的だな。」


「うじうじ悩んでるよりかはいいわよ。」


「お、あれじゃん。さっきさ、黒髪ロングの女子高生っぽい子がいるって言ったじゃん。」


「うん。」


「あそこ、もう1人増えてる。」


「…そんな珍しいことじゃないじゃない。」


「2-1だぜ。闇が深いよな。」


「何を言ってるかよく分からないけど。本人達が楽しそうならいいじゃない。それに女子高生っぽい子に目をつけた魁利の方が犯罪には近いわよ。」


「それもそうか。残念だな。」


「あんなに女の子抱えててよく言うわ。…ちょっと手洗ってくる。」


「おうよ。(…藍利は特定の子作れって言うけど、作ったら作ったで寂しがるだろーに。それにこんなことしてたらその子に怒られるっしょ。縛られるのは苦手だしな。あー、でもあんまり遊んでっとアイツになんか言われんだろうなー。アイツは真面目だし。まっ、今はまだ考えなくていっか。)」


「お待たせ。」


「…あ、そーだ。この後、ゲーセン行かね?」


「…いいわね。そう言えばこの間取ってもらおうと思ってたぬいぐるみがあるの。」


「いいぜ。取ってやるよ。」


「やった。」


「芋、残ってるけど?」


「食べるの手伝ってくれない?」


「なんだ、俺には1本もくれないつもりだと思ってたのに。」


「Lサイズ3つも食べたらさすがに飽きるわ。今日でしばらく分のポテト食べた気分よ。」


「自由人だな。」


「魁利も大概自由人だと思うわ。」


「双子だから似てんのはしょーがないな。」


「当たり前よ。」













かつて、双子は忌み子として畏れられ、さらに男女となるとそれは前世に心中した恋人同士だ、ともまことしやかに囁かれていた。

また、「片方がいるから自分はいなくても大丈夫」という“双子のジレンマ”により本当に消えてしまった兄弟もいた。

私は彼等がこの時代で平和に生きられることを願い、この物語を終えるとしよう。


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