ICC
バルサは引き続き監督をキセテンとし、今シーズンに臨むようだ。彼は以前も紹介したが、ポゼッションサッカーを好む監督であり、バルサの復権には欠かせないと思われている。
ただ、以前から指摘されているように彼の指導力には疑問符がつくことも多々あり、ベストチョイスとはいえないだろう。
彼は今季、中央を固めたポゼッションサッカーをやろうとしている。本来のバルサがやっていたティキタカの理想的なパターンは、前線の中央に3人のFWが張り、中盤の選手がそこへボールを運んで4人によるひし形を形成してから、パス交換で一気に抜け出すというものだ。
これには上手くゲームメークできてパスを出せる中盤の選手が必要だった。今年はピャナックとコウケーニョがその役割を果たせるだろう。
ピャナックはユーヴェにいた頃はディフェンスの面とパスの出しどころがない点において苦戦していた。当時ユーヴェは色んなフォーメーションを試していたが、ローガンとイグアレンはパスを貰いに前線から降りてくることがない。
ディブラと秀徹は比較的そういったプレーをしていたが、秀徹も基本は裏抜けを狙う選手。彼がプレーするにはやりにくかったに違いない。
一方、バルサではメーシュがまさにボールをもらいに来るタイプの選手だった。バルサはRWGにメーシュを配置しているが、攻撃の際には彼が中央に寄って、その場合にLWGとCFの選手は2CFのように動くのが通例だった。つまり、4-3-1-2を形成するのだ。
昨季のピャナックはこの攻撃方法に最も適応していた選手の一人である。今年はメーシュの代わりに入った秀徹をキセテン監督はメーシュと同じように使うつもりはないのでどうなるかはわからないが、ユーヴェの時よりも素晴らしいパフォーマンスが見られるのは間違いなさそうだ。
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シーズン前のプレシーズンマッチの時期には、バルサはアジアへと降り立ち、そこでインターナショナルチャンピオンカップ (以下ICC)に参加した。この大会自体は何か権威があるわけではないのだが、今シーズンを占う意味で重要となる。
グループステージの初戦でバルサは日本の強豪チーム、クラブ東京と当たる。バルサが属するグループステージの開催地は日本。日本のチームも出場している。
代表戦の時に日本で戦うことは多々あっても、秀徹がクラブの試合で日本にやってくるのは初めてのこと。日本のサッカーファンは皆、彼が来るのを楽しみに待っていた。新クラブで10番をつけるという快挙もあって、秀徹のユニフォームは飛ぶように売れ、日本だけで30万着が完売したという。とんでもない購買力である。
基本的に日本のクラブチームは欧州には劣るが、時に欧州のチームを苦しめることもある。以前クラブワールドカップでマドリードが来日した際には、延長戦まで追い詰めた。
この大会は戦力の調整や新戦力を試す意味も兼ねているため、バルサはBチームの選手やサブメンバーと主力の混成メンバーで臨んだ。
RWGにはバルサBで活躍し、今年はサブメンバーとしてAチーム昇格した阿閉も起用されており、LWGにファビオ、CFにグレーズマンが起用されている。秀徹はベンチスタートだ。
埼玉スタジアムに応援しに来た日本のサッカーファンたちはまず秀徹の欠場を悲しみつつも、阿閉が出場するという粋なはからいに喜ぶ。彼はバルサBで78試合19ゴール13アシストを記録しているドリブルが得意な選手だ。特に縦への突破を得意としているので、秀徹も評価している。ただ、ゴールへの絡み方やチャンスメークの仕方には改善の余地があるとも評価している。
ゲームは序盤からバルサペースで進行していく。東京はディフェンスラインを低く保って引いて守っているため、完全に崩れることはないが、バルサの猛攻を受け続けている。
また、これは日本の悪い癖だが、ボールを奪ってもディフェンス間でパスを回し、相当良い形にならない限り前へと進めない現象が起こっていた。バルサは割と高い位置でボールを奪取する考えがあるチームであり、そんなチーム相手にそれをするのは致命的なミスを誘発させかねない。
実際に前半23分にそれは起きた。CFのグレーズマンはスター選手には違いないのだが、非常に献身的なプレーができる選手で守備やサポートに徹したりもできる。守備に至っては良いか悪いかはさておき、狙ったターゲットを自陣のペナルティエリアまで追いかけ回すことすらある。
この日もグレーズマンは常に前線でボールを刈り取ろうと動き回りながらミスを待っていた。すると、相手のパス回しが緩慢になっていく。彼はこの隙を見逃さずに中央のDMFからボールを奪取。
そのまま左足から強烈なミドルシュートを打ち込み、先制点を奪った。彼は特にメーシュから疎まれているという噂が立つほど苦しいシーズンを送っていたが、今年からはメーシュはいない。のびのびとプレーしているように見えた。
その後は中々点を取れずにいたが、ファビオなどはJリーグにはない強力なドリブルでゴールへと切り込んでおり、対応には手を焼いていた。一方で、東京も前半41分にはバルサの左サイドの守備の脆さに漬け込んだカウンターを披露し、1点を取り返した。
オフェンス陣は比較的強い選手を起用しているが、ディフェンスはほぼBチームの選手を起用しており、ある種仕方ないゴールであった。
そして後半開始後の後半10分、ついに秀徹が試合に出ることとなった。観客の歓声はゴール後よりも高まり、それが期待値を表す。
ファビオと代わってLWGに入った秀徹。バルサの伝統的な赤紫と青のユニフォームの重みを感じながらゲームに挑む。さらに言えば、この背番号10は15年間メーシュがつけ続けた番号だ。また、彼は650ゴールものゴールを決めてきた。あり得ない数字である。
秀徹にも彼と同じ事をすることは出来ない。だからこそ、彼とは別のプレースタイルや影響力の持ち方でチームへ貢献しようと心に誓っている。
後半12分、秀徹へとコウケーニョからパスが出る。今日は左のCMFとして彼は起用されており、中央での働きが光っている。
秀徹にボールが渡ると、またまた歓声が上がる。流石に秀徹に渡るとまずいと感じたのか相手は二人がかりで止めに来るが、秀徹はパスをもらいに行くと、前を向いて的確に相手の重心の逆を突いたドリブルでかわしていく。
集団の力を重視するJリーグのチームはこういった個の力には弱い。今回も秀徹に好き勝手やらせてしまっている。まあ、たとえ相手チームがプレミアのチームだろうが秀徹にはあまり関係ないのだが。
ペナルティエリア手前までドリブルすると、秀徹は内側で待機していたコウケーニョにパスを渡し、自身はペナルティエリア内に走り込む。コウケーニョはその意図を察知してワンタッチで彼の前へとスルーパス。
完全に抜け出した秀徹はこれもワンタッチでループシュートを打ち、ゴールを優しく揺らした。これにて2-1。勝ち越しに成功した。
さらに後半36分には秀徹がドリブルでペナルティエリアへ侵入した際に倒されてPKを獲得。これを秀徹がものにして3-1での勝利となった。
もちろん前半のバルサの内容も悪くなかったが、秀徹が入ってからはそれが劇的に変わった。パスをつなぎつつ、それを着実に攻撃に転化させられるようになったのだ。実際、ポゼッションを好むチームにはボールを回すまでは出来るが、それ以降のところが難しく、苦戦するチームが多い。その鍵こそが前のメーシュであり、現在の秀徹なのだ。
1点目を決めたとき、秀徹はあろうことかメーシュがいたバルサでローガンのゴールパフォーマンスをやってみせた。これには後日様々な反応があったのだが、意図したところはメーシュの跡を追わないということだ。
ここでは秀徹はメーシュの後継者ではなく、“高橋秀徹”という選手としてプレーすることを明確化した。
ICCではクラブミラノに2-2と苦戦し、決勝トーナメントでもマンチェスターユニオンに1-0と辛勝しつつも、戦術がきちっとハマったアスレチックマドリード戦では4-0で圧勝した。このように波はありつつも確実に強いバルサが取り戻されつつあった。(ICCではバルサは準優勝)
高橋秀徹
所属 バルサシティ
市場価値:3億2000万€
今シーズンの成績:0試合、0ゴール、0アシスト
総合成績:245試合、200ゴール、98アシスト
代表成績:32試合、25ゴール、10アシスト
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