東京オリンピック

この東京オリンピックのサッカー競技は、後にシュウト・タカハシの大会であったと振り返られるほど、秀徹が活躍した大会であった。さあ、内容を見ていこう。


秀徹は日本選手団でも最高の注目度で開会式にも登場した。彼はただの選手としてでなく、この日はパフォーマーとして参加した。

登場すると、この日最大の拍手で迎えられ、ボールをおもむろにリフティングし始める。そして、ここから最高のショーが始まった。



数回リフティングすると、まずは頭を大きく超えるボールを蹴り、後ろ側へと行ったボールをヒールでノールックで前へと戻す。

次はそのボールをすっと軽くトラップして足の上で静止させ、くるっと自身を一回転させてその後もあり得ないほど高度な技を連続してこなしていく。人間はここまでリフティングに夢中になれるのか…、観客の誰もがそう感嘆するようなリフティングだった。



そんな上々な出来だった開幕式を終え、いよいよサッカー競技が始まる。グループステージで同組になったのは、コートジボワール、アルゼンチン、スペインだ。

フル代表の戦力で考えるならば、コートジボワールは同格程度、その他の2チームは圧倒的な強豪だ。しかし、U-23ならば話は別だ。



森谷は徹底的に代表でもU-23でもポゼッションサッカーを推し進めてきた。このU-23には秀徹と久木という二大スターが在籍している。

この二人はポゼッションの鍵となり、勝ちへと導く主力選手となる。さらに言えば、二人ともが自力での突破を得意とする選手だ。

昨シーズンのドリブル成功数は、秀徹が欧州で圧倒的1位の150回、久木は61回とスペインでもトップ10に入るスタッツを叩き出している。


そんな二人がいるのだから、U-23の選手には日本の個人技を止めることは極めて難しい。初戦のコートジボワールは身体能力が高い選手の多いアフリカの国にもかかわらず、LWGの秀徹とRWGの久木に手も足も出なかった。

結果も4-0と開催国・日本の圧勝に終わり、期待通りに秀徹はハットトリックを達成した。改めて秀徹は久木の連携のしやすさを感じる。久木もまた、秀徹とのプレーのしやすさを感じていた。



そしてスペイン戦がやってきた。アルゼンチンを2-1で下したスペインだ。

ポゼッションサッカーを好んでおり、フル代表のことだけを言うならば、そのサッカーは日本の完全上位互換である。日本が目指すポゼッションサッカーの究極形とも言い換えられるだろう。


U-23でもそのポゼッションサッカーは根付いており、オーバーエイジ枠のセバーロスはその鍵を握るゲームメーカーだ。

また、先述のようにクラブマドリードの主将・ランスもオーバーエイジ枠で在籍しており、彼は唯一秀徹や久木を止めるに足りそうな選手である。


試合開始後、4-5-1のフォーメーションで臨む日本と4-4-2のフォーメーションを臨むスペインはまず中央で激しく激突した。試合のキーマンとなる秀徹はCFで出場しており、OMFには久木が選ばれている。あえて中央が強いスペインに中央から勝負を挑もうということだろう。

試み自体は悪くない。中央の中盤の枚数は日本が3枚に対してスペインは2枚と有利であるからだ。



ただ、誤算もあった。森谷監督は相手のサイドはあまり機能しないだろうと考えていたからだ。というのも、スペインは以前から優秀な中央の選手を輩出していたものの、ウイングの選手は全くダメだった。

が、実際のところはRMFに配置されたフェラン・トールスが非常に強力で、サイドアタックがかなり上手く機能していた。彼はスペインのバレンシア・ユナイテッドで若くしてレギュラーを掴んでいる。バレンシアは強豪ということも考慮すれば本来警戒すべき相手だっただろう。


そんな中でも日本はサイドに苦戦しつつも、中央で確実に競り勝っていく。秀徹と久木のコンビネーションは素晴らしく、セバーロスやもう一人の中盤の選手では歯が立たない。

前半27分まではランスやバジェスというCBが何とか守っていたが、均衡は破られた。


久木が中盤でキープし、隙を見て秀徹へとスルーパスが入る。ペナルティエリア内へと走り込んだ秀徹が、ボールを受けようとするとランスはすかさずスライディングを決めてくる。

秀徹はくいっと足でボールを浮かせてそれを軽々とかわし、左側から右へと突き刺すようなシュートを打ち込む。ランスらによってしぶとい守備を展開していたスペインから、待望の先制点を奪った。



秀徹は点が決まったので華麗にゴールセレブレーションを披露する。サッカー選手は追い詰められた状況ではない限り、喜びを表現するためにセレブレーションあるいはゴールパフォーマンスと呼ばれる動きをする。

多くの場合は手を上げる、走り回るなどの基本的な動作にとどまるのだが、一部の選手はダンスをしたり特定の動作をすることで固有のパフォーマンスとして定着させることがある。

例えばグレーズマンは、某ゲームのダンスやダンスミュージックのダンスを披露していたり、サリーは土下座パフォーマンスで定着している。ローガンは、ジャンプして半回転し、着地するまでに両手を振り下げるという恐らく最も有名なパフォーマンスを持っている。


秀徹もユーヴェ加入前まではこれを真似していたのだが、流石にローガンの目の前で同じことをするわけにいかず、新たなパフォーマンスを考えることになった。

ジャンプする系、手を上げる系、ダンスする系…、どれも試してみたがイマイチしっくり来ない。最初非常に悩んだものだった。

同僚のディブラは親指と人差し指を伸ばして顔を覆う、ディブラマスクというパフォーマンスでもお馴染み。ローガンも固有のパフォーマンスを持っていることから、少し焦りすらあった。


そこで編み出したのがシュート・スイングと呼ばれるまで有名になったパフォーマンスだ。まず、人差し指を頬につけて走って勢いをつけたら、その人差し指をぐるっと回して最終的に握り拳にして手を引きつけるというものだ。

要は大げさなガッツポーズである。最初人差し指を頬につけながら始めるというのと、手に体を半周させること以外はオリジナリティはない。だが、このシンプルさがウケたようで、日本などでは真似する子供が続出しているようだ。

今回もこれを披露すると、観客はより強い歓声を浴びせる。日本でこのパフォーマンスをすることができるのは非常に嬉しいことだ。



その後、スペインはトールスからクロスが入り、ペナルティエリアの混戦の中で1点を奪って1-1とし、同点のまま今ゲームを終えた。

これによって日本の決勝トーナメント進出がほとんど確定した。アルゼンチンはコートジボワールに1-0の辛勝をしており、次のアルゼンチン戦で日本が相当な差をつけて負けない限りは予選落ちはあり得なかった。



アルゼンチン戦でも秀徹はその力を遺憾なく発揮した。オーバーエイジ枠を除けばU-23の選手は経験値が少ない。だが、秀徹は20歳にして欧州の五大リーグで約200試合に出場している。スキルあるいは技量だけでなく経験も彼らを上回っているのだ。

この試合ではCFにプロフェッショナルこと本多が入り、秀徹がOMF、久木がRMFに入った。三人はそれぞれに流動的なポジションの入れ替えを行い、スムーズに攻撃していく。特に秀徹、本多間のポジションの入れ替えが激しいため、相手も最もマークすべき秀徹へのマークが甘くなってしまう。

それを狙いとしていた日本は中央突破をはかり、最終的に秀徹の2得点を含む3-0での勝利を掴んだ。


ここまでの秀徹の試合の採点は8.9点。2位が8.1点なのを考えると圧倒的である。二年前のワールドカップですら評価点では1位をひた走っていたのだから、当然と言えば当然なのだが…。




高橋秀徹


所属 ユヴェ・トリノ

市場価値:2億€

今シーズンの成績:41試合、20ゴール、17アシスト

総合成績:196試合、160ゴール、72アシスト

代表成績:26試合、20ゴール、9アシスト

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