シーズン進捗

ミュンヘンFCとの試合の後、チーム内でMVP級の活躍を見せた秀徹を、ハルニガー監督も起用しないという訳にいかなくなった。

次節から4-3-3のフォーメーションに切り替え、秀徹はLWGとしてスターティングメンバー入りした。3トップは右から、リルナー、クローズ、秀徹で構成され、ミッドフィルダーのOMFには、ディビィが入る。破壊力は抜群であった。


アマチュア、プロの計64チームが参加するドイツカップの一回戦も順調に勝ち上がったシュトゥットガルトFCは、リーグでハノーファーユナイテッドに3-1で勝利し、ハンブルクシティには2-2で引き分け、さらにフランクFCを1-0で下した。結果的に第4節終了時点で8位に食い込んだ。決して悪くない。



内容はと言うと、ハノーファーに対しては超攻撃的に試合を進め、秀徹のドリブルもかなり有効打となった。チームもボールをポゼッションすることができ、かなりのチャンスシーンがあった。秀徹も右のリルナーからのクロスをファー (クロスをあげた側から見て奥側)で受け取ってゴールに流し込んで一点をあげ、さらに持ち前のドリブルで三人を抜き、最後にクローズにパスをしてゴールを決めさせ、初アシストもあげた。

ただ、次節以降は厳しい試合となった。アウェイ戦となったハンブルクシティに対しては、ボールをポゼッションするサッカーをしきることが出来なかった。そうなると、秀徹も一試合を通してハイプレスをかけるわけなので消耗が激しく、かと言ってそれを止めると攻撃陣とは対照的に脆弱な守備陣が相手のチャンスメークを簡単に許してしまうため、秀徹は守備面では十分な働きをしていたものの、攻撃面では本来の力を発揮できず、ゴールに絡むことが出来なかった。

また、フランクFCでは敵が積極的にボールポゼッションをしてくることはなく、秀徹が消耗しつくすことはなかった。しかし、相手のDMF(ディフェンシブミッドフィルダー)で、日本代表キャプテンも務める難敵・長谷川によってマンマークされた秀徹はボールを持った瞬間に激しいプレスにさらされ、ボールを好きに持てなかった。何とかカウンター攻撃の際に抜け出してスピードで追っ手の選手を追いつかせずにゴールはあげれたが、問題点は浮き彫りになった。


4試合が終わって秀徹の成績は3ゴール1アシスト。16歳の選手としてはトップレベルの活躍であり、結果もそうだがプレーの質も相まって市場価値はさらに跳ね上がり1200万€(約15億6000万円)となった。日本人の中でもかなり上位に食い込んでいる。当初、1億円近くかけて何の実績もない彼を獲得したことに、レッズの上層部も懐疑的であったが、この市場価値の上昇には跳んで喜んでいた。



ただ、そのようなことは本人にとってどうでも良く、とにかく彼は自身の弱点克服に努めていた。先程も言ったようなマークのつかれ方を何とかするには、ワンタッチ目で敵に奪われないような工夫が必要になる。

今までは三人以上でプレーしたことなかったから、パスを受けてからワンタッチ目を大事にしなくてはならないという意識すら持っていなかったが故の弱みだった。

どうすれば良いか思案した結果、トラップなどの技術の向上も勿論なのだが、ワンタッチ目で技をかけられるように練習を積めば良いのではないかという結論に辿り着いた。

そこからの秀徹は毎日3時間残ってコーチと練習をし、ワンタッチ目からのダブルタッチ、ルーレット、シャペウ、股抜きなどを習得しようとした。ただ、やはり難しい。別にボールのコントロールは秀徹のお手の物なので大した問題にはならない。普通に1vs1のデュエルで技をかけるならばどんな技もかけられるが、パスを受けてすぐとなると、向いてる方向やボールの転がってくる方向が固定されているため、繰り出す技を選ぶ必要がある。その技の選択がかなり難しかった。



紅白戦でも一定の効果があったこのワンタッチプレイ。第5節以降の試合でも実際に使ってみた。

長谷川ほど守備の上手い選手は中々いない。そのため、どうしてもそれを使わなければいけない相手もいなかったのだが、このプレーを心がけると抜かれるのを警戒した相手に距離を保ってボールをキープできるので次のプレーがしやすくなるというメリットも発見した。

また、手の内をほぼ知り尽くす父とドリブルの練習をしていたのもあって、秀徹は咄嗟の判断で相手をかわすことが他の選手よりも遥かに得意だ。それを活かした股抜きなども盛んに行われ、より秀徹はドリブラーとして上達することが出来ていた。



第5節は1-0で勝利、第6節は1-3で敗北、第7節は2-4で敗北、第8節は2-1で勝利し、秀徹は3試合の出場で2ゴール1アシストをあげた。ワンタッチ目で潰されることが少なくなったのもあって、非常に調子が良かった。得点ランキングでも6位タイにつけることも出来ていた。



そんな中、第9節で再び強敵が立ちふさがった。強豪・ドルトFCである。ドルトは、リーグ内でミュンヘンFCに唯一対抗できるレベルにあるチームであり、前任監督はクラップだった。

選手には、ロングフィード (ロングパス)においては右に出る者はいないほどのCB(センターバック)のフルメンス、テクニックのある歴代最高の日本人と名高いOMFの香取、OMFやLWGでブンデスリーガトップクラスの活躍を見せるルイス、今季すでに7得点しており100mを10.3秒で走る快速CFのオーバンなどがいる。そうそうたるメンツが揃っており、得点力も守備力も申し分ない。


試合の舞台はホームスタジアムのメルベルアリーナ。前年度は14位だったのに対して現在7位につけているシュトゥットガルトのファンにとっては、ぜひ勝って欲しい試合だった。

秀徹も気合を入れて試合に臨んだ。



高橋秀徹


所属 リヴァプール・レッズ→シュトゥットガルトFC(Loan) 

市場価値:1200万€

今シーズンの成績:7試合、5ゴール、2アシスト

総合成績:7試合、5ゴール、2アシスト

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