第4話

言語障害が起きているかもしれない。

そんな特異な情報は生徒の好奇心をくすぐり、

瞬く間に広がっていった。

そして、1番若手の教師に伝わり、他の教師たちに

伝わり、職員会議が延長を決定した午前12時。

教室では、カリスマ系男子を筆頭に言語障害で使えない言語の解明に乗り出した。


僕は窓側の席に座り、教室の中央の喧騒を後目に外を眺める。

遠くでは、煙が出てる建物もある。

サイレンが聞こえたような気がした。

聞こえなくても、きっと鳴っているだろう。

どうやら古い建物はほとんど倒壊か、壊しているようだ。外からみて何も変化ないようなビルなども中は相当崩れているのだろう。

今回の地震は過去に無いほどの大規模で復興には年単位かかるだろう。

そんな先の自分なんて想像もつかない。

校庭では上級生が体育祭で使うテントを建てている。

太陽は雲に飲み込まれ始めていた。


スマホが数回振動する。

『そっちはどう?こっちはなんとかなってるよ笑笑』

そして、添付された写真。

避難所近くにあったパネルだろうか、パネルに顔をはめた写真が送られてきた。

彼女の顔がどれほど可愛いかどうかなんてもう今は

わからない。

ただ、安心して、微笑を浮かべられるそんな笑顔。

その顔はとても素敵だった。

『 こっちもなんとかやってる、なんだよあの顔ハメww』

何を送ろうか悩んで、教室中央の喧騒を送ることに

した。


教師が段ボールにパンを入れて教室に入る。

少し遅めの昼ごはんはコッペパン。

小学校以来の口の水分を全て吸い取りつくすスポンジを無理やり嚥下する。

これが嫌で、私立の進学校に入った側面もあると

いうのに。


食べながら聞けと言う教師の話。

曰く、これから多くの人が体育館などにやって来る

だろうとの事。もう既に来てる人もいるとか。

曰く、大規模な言語障害が起きている可能性があるとか。

これを、教育委員会や、県、国に伝える必要性があるかもしれず、伝える手筈を整えてるとかなんとか。

とっくに、教室の誰かがSNSなどに書き込んでる

だろうに。

そして、大規模な言語障害と汚染物質の関係がどうのこうのとか、昔汚染物質が地震で流出したこともあったとか、そんな無駄な余談が続く。





『新たな情報です。□□地震の被害者の多くに共通する言語障害が発生していると想定されており、人類に害のある汚染物質が流出しているのではないかという専門家の意見が出ているそうです。政府は――』






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