第3話
教室には、教師が使っていたCDプレーヤーからラジオが流れている。
『 午前10時より、首相官邸にて緊急会見が行われようと―――』
それを聴きながら皆で片付けや整備を始めた。
しかし、ほとんどは地震の衝撃で上手く動けていない。
棚から落ちたものを整理したり、体育館の設備の
手伝いに行ったりするカリスマ系男子と
その取り巻き達は、進学校として成功した姿
なのだろう。
かく言う自分は箒を持って掃除をする振りをしつつ、
これから先の漠然さに思いを馳せていた。
体育系男子達は、ペラペラと話しながら効率悪く仕事してる雰囲気を出している。
「にしても、この地震まじ怖かったよね、そのゾクッって感じ?」
彼らの語彙力に進学校であってもピンキリであることを実感する。
哲学メガネもそう思ったようだ。
「君たち、今は皆がそのような状況なんだ。そして、外を見れば分かるだろうが、建物が倒壊してたりもする。そんな、■■、、、あ、、え、、」
言葉を途切らせ、頭を手で押さえている。
もういいと言うように体育系男子から離れていった。
彼らは懲りずに話を続けている。
頭を押さえながら壁に寄りかかっている哲学メガネ。
手持ち無沙汰な僕は声をかける。
毎日机で寝てるだけだが、ここが男子校のいい所なのだろうか。別にクラスメイトと話せないほど仲が悪いとかそういうことはない。話しかけたら答えるし、談笑ぐらいはする関係に皆がある。
「どうしたんだ?頭を押さえて」
顔を顰めつつ彼は答える。
「言葉が、、浮かばないんだ。違う、浮かんだのに消えるというか、使おうとした単語が頭から消えたんだ。それと同時に少し頭痛が」
何を言っているのかわからない。
どう答えようかと口をパクパクさせていると、近くにいた成績良いぽっちゃりがボソボソと話しかけてきた。
「言葉が浮かばず、それと同時に頭痛だろ、、、もしかしたら、言語障害のようなものなんじゃないか?」
それが教室の噂好きチビに聞こえ、教室全体に広がり始めた。
すると、他の生徒でも似たような事があったのか、騒ぎが大きくなる。
そして、1つの説が流れ始める。
地震の被害者の多くに一定の言語障害が起きていと。
そんな中、僕が気にしたのは1つ。
小さくつぶやく
「好き、、君が好き」
好きは消えてないようだ。
肩の力が抜けていく。良かった、、、本当に。
■
『 政府によると、地震により本州と□□地方とを繋ぐ橋が損壊したようです。それにより、救助はヘリや船により行われることになります。一刻も早い救助と復興を祈ります』
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