第4話 トーゴで作業開始
ゴムボートには、コンデンサが満載。
数日分の食料も積んである。あとはまた、鮮度の高いものを運んでもらう予定。
トーゴの
エキンくんと、もう1人、今日明日だけのお手伝いの人、そしてルー。
これからトーゴに向かう。着く頃には暗くなっているだろう。
なんせ、午前中は、昨日回った経路をもう一度回ったからね。議題は公衆浴場だったけど。
これで、船も公衆浴場も、俺がダーカスを離れていても進んでいくだろう。
トーゴでは、最年少の魔術師さんが腰を据えて、新造の
戦争中にコンデンサを盗ませたときも、
ルーが言うには、近いうちに、サフラの魔術師の半分がダーカスにやってくる。そうすれば、
そうしたら、ローテーションを組んで、魔術師さんたちにもまとまった休みを、って。
そうだね、特に最年少の魔術師さんは、休みなしだったからね。休暇が必要だよ。
トーゴの、
なんといっても、コンデンサの設置場所が壁面の棚で、ダーカスのそれのように床下に潜る必要がない。腰を曲げずに立ったまま仕事ができるってのは、つくづく楽だよ。
ただ、リングスリーブのカシメを半日やったら、やっぱり握力が抜けちゃってヤバいけどね。
夜は夜で、エキンくんのお勉強。
九九は2日で覚えた。
次は、桁の大きい数の掛け算。小数点のある数の掛け算。
その次は割り算。
それが終わったら、オームの法則だ。
教えるのも、俺と最年少の魔術師さんの2人かかりだから、生徒より先生の方が多い。エキンくん、君は幸せ者だ。
ま、エキンくんも、泣き言言わずによく頑張っているよ。
毎朝昼、ゴムボートいっぱいのコンデンサが届ことになっている。3000って数は多いよなぁ。重いし、
夕方便では、生活必需品が運ばれる。
このあたりは、エフスとトーゴの開拓地にも行くので、ゴムボートはフル活動だ。
本当に、コレがなかったら、輸送がすべてのボトルネックになっていたな。
仕事をしていても、定期便の時間は船着き場に行かないとならない。
手紙も含めて、なんか届くかも知れないからね。
ここへ来て2日目、石工さんの群れが、ネヒール川を遡っていった。
お互いに手をぶんぶん振って、あいさつしたよ。
トーゴの船着き場と、開拓者村の住宅の基礎を作り終えたんだ。
ついでに、追加工事の、トーゴの鍾乳洞内の地ならしもしてくれたらしい。これで、あとは棚を置くだけで、冷蔵庫が完成だよ。
このまま彼らは、エフスの船着き場と、開拓者村の住宅の基礎を作りに取り掛かる。
それが終わらないと、彼らはダーカスに帰れない。
で、ダーカスに戻ったら、公衆浴場の仕事が待っている。
この半年を超えるくらいの間に、俺が来る前の10年分くらいは働いていると思うよ。景気が良いにも程があるって感じだからね。
そう、みんな忙しい。
石工さんと言えば、トーゴの
また新たな
ほんと、休息は計画的に取って貰わないとだよ。
ダーカスのエモーリさんから、お手紙が届いた。
握力を回復させる休憩中に、目を走らせる。
まずは1件目。
2日後から、いよいよ避雷針アンテナが届きだすそうだ。あまりに重く、大きいので、1回に1本しか運べない。で、他の荷物もあるから、原則1日1本。
どうやら、定期便のボートもフル往復になるそうだ。もう、真夜中まで行ったり来たりしないと間に合わないと。
アンテナを立てる以上、それらを繋ぐ架線の電柱も運ばなきゃだし、トーゴとエフスの開拓村に建築資材も運ばなきゃだし、さらに各国から来た入植者も運ばないとだから、ケーブルシップ、もう限界が来ちゃう。
ホント、繰り返すけど、これがなかったらお手上げもいいところだった。
野太い配線ケーブルも、ダーカスから延ばされてくる。これはあまりに重いので、陸路になるそうだ。
工事自体は、まぁ、物理的に腰の高さくらいの電柱に架線をして、各アンテナを結ぶだけ。
それらの結線は俺の仕事だ。
電柱が低いのは、輸送の問題もあるけど、資材が豊富になってから電線と電柱の高さも増せばいいやということで。
今は、資材の方がもったいないし、架線が邪魔にされるほど人も農地も足らなくはないからね。とはいえ、地面に接していると、あっという間にゴムが劣化して、漏電、いや、漏魔素するからね。天然ゴムだからしかたないけど。
そのうちに、厚めの金箔で、ケーブルを覆うことも考えなきゃだろうな。紫外線も劣化の要因として怖いからね。
もひとつおまけに、電柱が低くて人が架線に触ってしまう危険については、魔素流が来る時以外は活線になることもないから平気。
俺的には、気持ちは悪いけど。どんな形でも、空中に架かっている線は、触ったら死ぬ電圧が流れているという認識になっているから気になるけどね。
とりあえずは、複数の
というのは、賢者の石を使った、半導体回路の耐圧が判らないんだ。
どうやら、賢者の石の大きさが大きければ大きいほど魔素流に対する耐圧も上がるみたいなんだけど、俺のテスターでは、魔素流に付随する電圧は測れても、魔素流の強さ自体は測れない。
トーゴで、魔素流が来るごとに、賢者の石を小さくしていって、破壊されてしまう限界を突き止める実験をして、それからそれに安全係数を掛けて実際に運用できるものを作ろうってことになっている。
それから、電圧と魔素の強さの相関関係も、きちんと係数を出そうって話も出ている。2つの世界で進む時間の速さに揺らぎがあったように、電圧と魔素の強さの相関関係にもなんらかの揺らぎがあったりしたら大惨事になりかねない。
まぁ、そんなことはないと思うけど、希望的観測で動くには、魔素流と
だから、俺がこの世界に持ち込んだブレーカースイッチも、しばらくはお預け。
で、その確認が終わるまでの間は、魔素流が来ているとき以外は、
この辺りの回路が安心して使えるようになったら、俺が今入れているヒューズとダブルで安全が確保されることになるけど、もうちょっと先のことになってしまう。
なんせ、俺がこの世界に来たばかりの頃とは違う。
今は、切羽詰まっていないし、当てずっぽではなく、きちんと確認して歩を進めたいからね。
で、避雷針アンテナ、トーゴの開拓地に港を挟んで2本、トーゴからエフスまでの間に6本、エフスからダーカスまでのあいだに8本。
とりあえずは、それだけはアンテナを立てて、繋ぐ。1本に付き1日は掛かるだろうけど、この本数は、ネヒール川の両岸に、二重に経路を作ることを想定している。
万が一断線してもいいように複数経路を持たせるという意味と、両岸の開墾を一気に行えるようにするという、2つの意味がある。
なので、とりあえずは、この半数のエフス側での結線工事ができれば、かなり用は足りる。さらにエフスは橋があるから、ネヒール川の両岸に中継ポイントを作れるな。
先々、トーゴにもケーブルを渡す橋が必要だし、完全な完成はまだまだ先だ。
トーゴの開拓組とエフスの開拓組から、人手を出して貰える手筈も整ったと。ついでに、水路をダーカスからエフスまで引くことについても、エフスの皆さん、喜んで了承してくれたらしい。
エフスは、開墾が進むにつれて、土台まで含めてアンテナを増やしていくことになる。
だから、土木業に相当する分だけ地元の人にどんどん進めてもらえば、結線は後から行った俺ができるからね。
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