第5話 船の名はヤマト?


 エモーリさんからの、お手紙の続き。

 2件目の用件。


 エモーリさんの船舶設計図だ。三面図として描かれている。

 早いなぁ。

 注もあって、なになに、「1、ゴムボートの平底は、波に乗り上げて上下の揺れが激しいから、歴史書の絵にある形状にしました」、か。

 「2、船の水中部分の形状はまったく判らないので、水上部から見える線を延長しました」

 なるほど。


 正面からの図だと、下向き正三角形みたいだ。

 なるほど、今まで考えたこともなかったけど、この形だと、波に乗り上げないのか。そっか、波を切り分ける形になるもんね。

 うわぁ、意味があるんだね、形って。海なし県に育った俺、船なんて漠然としか見ていなかったよ。

 でも、ちょっと描き直してみた。下向き正三角形より、ホームベース状ならどうだろうって。その方がきっと荷物も多く詰めるし。


 上から見た図だと長楕円型ってやつだ。

 水汲み水車ノーリアを作るときに、いろいろ水の中の抵抗を確認する実験していたから、エモーリさんなりにノウハウもあるんだろうね。


 で、横から見た図は、なんか、切ったスイカを思わせる完全な半円形。

 これは、なんか嫌。

 完全に、俺のわがまま。だって、船のことを全然知らないのに、いちゃもんつけているからね。


 でもやっぱりさ、宇宙戦艦みたいに、もしくはその元となった戦艦大和みたいに、船首の底に、前に突き出したドームが欲しい。あれあると、絶対かっこいい。

 なんのためについているかは知らないけど。

 知らないけど付けろって、なんて乱暴なんだ、『始元の大魔導師』様は。


 あと、船尾は垂直に平らにしたいな。

 両方舳先みたいな格好は、やっぱり違和感がある。手漕ぎ船でバックを頻繁にするんならばいいだろうけど。

 そもそもこの形状で、動力の基本が帆船じゃ、曲がるのにも苦労するよね。

 船尾を平らにすれば、舵が付けられるじゃんって……、舵!

 エモーリさんの案、舵がねーぞ。どういうこった?

 おいおい、って。


 舵がねーと、島★介が、「取舵一杯、よーそろー」って言えないじゃん。

 って、そうなると、この船、艦橋はどこだ?

 さすがに第三艦橋は要らないけど、第一艦橋もないじゃん。

 見ててよかった、宇宙戦艦ヤ□ト。

 実在の船とは関係ないと思っていたから、思い出しもしなかったけど、これ、エモーリさんの案にいくらでも穴を見つけられるぞ。

 宇宙戦艦も船だったんだなぁ。


 高い位置で、見張りと操船ができる艦橋は絶対必要だ。

 あと、舵だけじゃないよ。

 ロケッ○・アンカーは要らんけど、錨は絶対に要るよな。低い声でシブく、「抜錨!」って言いたいぞ。

 内部には隔壁も必要だよね。軽くて強くて、水密のが。これで、船の強度も増すじゃん。ないと、いざという時、「隔壁閉鎖!」って言えないじゃん。

 きっと、波なんて、全方向から来るし、船全体を山折りにしようとしたり、谷折りにしようとしたりするはずだよね。単なるモノコックの箱枠構造より、こういう、中を細分化した箱構造がさらに頑丈だよ、きっと。


 そういえば、「バラストタンク・ブロー!」とかも言ってたよな。隔壁で作った空間に水を貯めて、バランスを取ったり飲料水にしたり、そっか、「こういうこと」なのか。

 さらに、艦載機は要らんけど、救命ボートは必要だ。

 スラスターは付けられないだろうから、その分、接岸のときに人力で微調整できるような、なんかの設備も必要だろうな。


 武装は……。まぁ、なしでいいよな。

 棍棒と盾でも積んでいければ、それで十分。

 主砲だ波動砲だは、さすがに無理だし、どこに対して使うんだっていう問題が根本的にある。

 海外の大陸とは、戦争には、ほぼ絶対ならない。だって、戦争になるくらいならば、他の大陸からすでに人が来てなきゃおかしいからね。

 つまり、海の向こうの大陸でも、船は失われているはずなんだ。

 で、こちらから攻め込む意志がない以上、戦争にはならんだろ。

 


 さらにエモーリさんの注は続いている。

 「3、艤装は木材を多用し、上部が重くならないようする。

 4、全体の大きさは、20身長分。幅は4身長分。

 5、船底が尖っているので、そのまま岸に上げらない。横倒しに倒れてしまう。ドックなどのメンテナンス施設か、横から支えられる台が必要」

 なるほどなぁ。「ガントリーロック、解除!」のあれかぁ。

 そうか、ドックに水が入ってから「ガントリーロック、解除!」ってしたのは、そうしなきゃ、そりゃ横に倒れるからか。なんも考えずに見ていた。

 日常で、船なんかまったく見てないからねぇ。


 大きい船ってのは、整備も含めたシステムとして運用しないといけない乗り物なんだなぁ。

 そして、エモーリさんも、いろいろ考えているんだ。

 うーん、新しいものを作るってのは大変だよ。

 

 とりあえず、俺、頭の中で地球からイスカン○ルまでの旅路を思い出して、必要なものを描き足したり書き足したりした。

 で、定期便ボートでエモーリさんのところへ返送。

 やっぱり、艦名はヤマトがいいなあ。

 カッコよきゃいいんだよ、カッコよきゃ。

 で、ひらがなだと沈むの前提だし、漢字は沈んじゃうかもしれないから、やっぱりしぶといのはカタカナだよな。


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