第8話 機械の発見、トーゴへの出発とか
さらにその翌日。
至急の使いが、ブルスに派遣されている魔術師のセリンさんの
興味があれば、すぐに銀貨を送れって。
ずっと、ギルドを通したりして、
で、セリンさんは法具のことは解らないけど、それらしいものが見つかったって。
いっそ、ブルスまで行こうかと思ったんだけど、俺自身は火薬づくりに忙しくて、ダーカスから出かけられない。
さっさとネヒールの大岩周辺の工事を終わらせないと、トーゴの
なにがって、リバータの短い骨が、ネヒール川の架橋工事の足場として使い倒されたあと、
だから、さっさと発破をかけないとなんだ。
で、提示額が銀貨5枚ってことならば、空振りでもいいやと割り切って、ギルドで若い冒険者2人に依頼を出した。
依頼を出すとほぼ同時に即決になって、1人は、もしものことを思って、倍の10枚の銀貨を持ってブルスまで急ぎで走ってもらった。セリンさんへのお礼は、ダーカスに戻った時になっちゃう。だって、まだ激弱な冒険者が、多めの銀貨を持ってうろうろするのは危ないからね。
もう1人には、満タンのコンデンサを一つ持って、二輪の大型台車を転がしてその後を追ってもらった。
機械を買えたら、それに積んで戻ってもらうためだ。
帰りは、若い冒険者2人と、ダーカスの王からブルスへの使者となった書記官、護衛のセリンさんの大所帯になるから、それなりに安心できるだろう。
で、それでもなにかあった時にって、セリンさんが魔法を心置きなく使えるようコンデンサを持っていってもらったんだ。
「あの時、ああしておけばよかった」みたいな後悔はしたくないからね。
それだけの価値があるよ。
本当に、
ケナンさんのパーティー、結局、みんな戻るのに時間がかかっている。
1番危険なのは、レンジャーのジャンさんかもしれない。おそらくは、ゼニスの山越えをして帰ってくるだろうから、文字通り命がけかもしれない。それも、ルート開拓という探検込みだからね。
戻ったら、いくらか銀貨を振る舞わないといけないだろう。
ケナンさんとアヤタさんはほぼ間違いなく問題なく帰ってきてくれるだろうけど、サフラの王のご機嫌次第な問題点がある。
あと、帰り道がルーの母親さんをエスコートしながらだから、ちょっと時間がかかるかもね。
機械の話が、1番なんもなく戻れる予定の、ブルスへ行った魔術師のセリンさんからなのは、幸運だったかもしれない。
ただ、よくよく考えたら、ブルスが1番見つかりそうではあったんだよね。
骨董品の出物を探すのに、1番の都会のリゴスでは望み薄。
そもそも
リゴスと国境を接していて、1番交易が活発なエディも、よほどの幸運がないとダメだろう。
そこへ行くと、ブルスは田舎で、交易の経路から外れていて、そのくせ
経緯はセリンさんが戻ってきたら詳しく聞くとしても、楽しみだよ、すごく。
蓄波動機と繋ぐ、魔術師の手を模した金の金網を、密かにラジオペンチで作っていたけど、それも中断。
しかも、少なくともダーカス国内に複数の設置をするのは見えているし、ある程度の量産も考えなきゃだからね。
まあ、ブルスから大荷物を持って、揺らさないように気をつけて運ぶとすれば、5日で帰るのは難しいだろう。
少し気長に待つつもりで、課題を片付けてしまおう。
− − − − − − − −
エモーリさん、スィナンさん、シュッテさんと打ち合わせも終わった。
畑の肥料にするために高温発酵させている、人肥の周りに浮き出している硝石の結晶も集めた。もちろん、鼻を押さえながら、だ。
そして、ネヒール川の無人の川原で、黒色火薬の配合を変えたものを何回か爆発させた。発火装置も、きちんと働くか確認が必要だからね。
硝石が怖い。
だから、木炭と硫黄を先に混ぜて、その後から硝石を混ぜた。
おかしいなぁ。
特撮モノとかだと、あれほどどっかんどっかん爆発しているのがカッコよかったのに、自分でやると、手が震えてお話にならないよ。
さすがにルーにも近寄るなって言ってあるので、その手の震えを見られていないのが救いかな。なに言われるか分らないからなぁ。
で、拍子抜けしたのは、硝石だけだとかなりの衝撃を与えないと爆発しないみたい。湿度を吸うとすぐに一塊になっちゃうんで、怖くて遠くから木槌でそっと叩くんだけど、結局一度も爆発しなかった。さらさらにしないと、木炭とかと混ぜられないからねぇ。
で、木材は希少なんだけど、木槌でない石や鉄のハンマーだと、火花が散るかもしれないから、とてもじゃないけど勇気が湧かない。そう考えれば、木槌も安いもの。
で、できあがった黒色火薬を、俺が持ち込んだコピー用紙を丸めたものに入れて、ダイナマイトっぽい円筒形にする。それに電熱線を仕込んで完成。
石工さんたちに、ネヒールの大岩にこの円筒形の穴を、彫ってもらってあるんだ。おおよその設置図も渡している。
あとは、俺、タイミングをみて、またあの大岩に行って、黒色火薬を仕掛ける仕事をしなきゃだ。
もっとも、あそこは湿気っぽいので、電気の配線工事の方を先に済ますけどね。火薬が湿気て爆発しなかったら悲しいからね。
このテストケースが上手く行けば、レンジャーのジャンさんが持ち帰るエディ王の返事次第で、本格的に火薬も作ろうってことになった。トンネル掘らないまでも、土木工事には必要だからね。
で、この手の話をするにも情報が必要。
俺がこの世界に持ち込んだ本のことだ。
持ち込んだ俺すらがなにがあるか判っていない状況なので、魔素石を埋め込まれている外交担当の書記官が1人、目次だけを洗い出した表を作ってくれることになった。
もう、仕事のペースとかからして、そういうのがないと間に合わないよって。
エモーリさんとスィナンさん、時にはタットリさんまでが、本の山を前に座り込んでいたからねぇ。
− − − − − − − −
で、いよいよ、トーゴの開墾チーム、にぎやかに旅立っていった。
農業指導のパターテさんと教師役のデミウスさんもだ。
大量の食料と鉄製農具とテントを抱えて、だ。
賢者の石って、水中には無いんだって。
だから、湿地の仕事に、鉄の道具は心配なく使えるそうだ。
まぁ、どうやら魔素流も海とか川とかで水に触れると、一気に拡散しちゃうみたいだから賢者の石もできようがないんだろう。
で、開墾時に、この世界の米である、自生しているイコモも可能な限り収穫してもらうことになった。
種子の確保と、トーゴでの食料確保のためだ。
もっとも、トーゴの面々はイコモを直接食べるわけじゃない。イコモはあまりにも高価なので、現金化して食料を買った方がお腹いっぱい食べられるからね。
そして、その2日後には、トーゴの
指導役の石工の熟練の職人さんと、最年少の魔術師さんもだ。シュッテさんは架橋の方に掛かりきりだから、出張は無理。
こちらも、全員がタガネとハンマーを持っていくことができた。
エモーリさんには、ひたすら感謝だよ。
そしてスィナンさんにも。
石工さん達の方は食料を持たなかったので代わりに、テントとか、教育用の黒板とかも持って行って貰った。
黒板はスィナンさんが、時間と部材をなんとかやりくりして作ってくれたんだ。
さらに、もう一つ。
金の棒とケーブルも数人がかりで持っていってもらった。
できるだけ高いところにこれを立て、ネヒール川の流れまでケーブルを引っ張っておけば、不意に襲ってくるかもしれない魔素流への対処は十分とは言えないまでも、無いよりましだろうさ。
職人さん達が焼かれちゃ大変だから、とりあえず間に合わせだよ。
石工さん達はトーゴに着いたら、現地での石の規格ブロックづくりから始まる。さすがに石の長距離輸送は厳しいからね。
石が採れそうな場所の目星もついている。
トーゴは鍾乳洞もできるくらいだから、柔らかい石灰岩か大理石には困らないだろうって目論見もある。
最年少の魔術師さんの設計だと、
で、一気にギルド近辺が静かになった。120人からいなくなりゃ、そうなるよね。
ちょっと淋しいくらいだ。
ラーレさんが、露骨にほっとしているのが可笑しかったよ。普段あんまりそういうの、表情に出さない人だからね。
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