第24話 王の介入?


 ボーラさんと書記官さんが、王の前から退出した。

 ルーも、ボーラさんの宿の手配で一緒に退出。書類ができるまで、この街に留まることになったからね。


 で、俺、王様にお礼を言う。

 身の安全を図ってもらうってのは、最大にありがたいことだよね。利害関係的にも理由があったとしても、だ。


 王様は、「気にするな」って感じで手を振って、話題を変えた。

 「ケーブルシップ、実現の目処が立ったそうだな、『始元の大魔導師』殿」

 「はい、1番の難題の、ケーブルの当てができました」

 「死の危機を脱した後、一呼吸もしないうちに、『リバータのたてがみを刈れ』と叫んでいたと聞いたぞ。

 ハヤットの背中には、べったりとリバータの体液が付いていたと聞いた。それ程に危険極まりなかったというのに、その執念には恐れ入る」

 「いえ、ケナン殿のミスリルの剣と、腕があってのこと。

 私は思いついたに過ぎません」

 「いや、その思いつきが大変なのだ。

 そのリバータが泳ぎ去ってしまえば、それまでのことではないか。

 ケーブルシップ、実現させようぞ」

 「それは、本当にありがとうございます」

 「ケナンの剣に関しても、砥ぎの費用はこちらで持つ。

 ケーブルシップの実現の折には、やはり褒美を取らせねばな」

 「お心遣い、感謝の念に堪えませぬ」

 そう、お礼を言ったら、王様、にやにやしている。


 「礼を『始元の大魔導師』殿が言われるのは、ちと筋が違うがな。

 だがな、さきほどのサフラの王の申し出、『悪くはない』と余は思ったぞ」

 「えっ、どういう……」

 「決まっておろうが。

 『始元の大魔導師』殿をサフラに譲ったら、彼の国は半年で財政破綻して、国自身を身売りに出すぞ。あそこは、円形施設キクラがないからな。『始元の大魔導師』殿の世界との貿易もままならぬ。

 そうなってから、その身売りされた国を財政援助すれば、余は2国の王よ」

 やっぱりさ、ツッコミ能力がないと王は務まらないのかねぇ。

 「怖い」ったらありゃしないよ。

 んなこと、俺は考え付きもしなかった。


 で、そのにやにや顔は、俺に対するネタフリだよな。

 ルーの親父さんを屋敷から追い出せって言った時と、同じ顔している。

 つまりは、言っていることと考えていることがまるで違うんだ。

 「私、スパイみたいな仕事は、きっとできませんよ。

 殺されて終わっちゃいます」

 「知っておる。

 だが、『始元の大魔導師』殿、余が行けと言っても行かぬのに、ルイーザが行けと言えば行くのであろう?」

 えっ!

 なにを言い出したん!?


 「『始元の大魔導師』殿。

 正直と謙虚は美徳だが、それによって己を見誤り、女子おなごを泣かせるなど、言語道断。

 『始元の大魔導師』殿は、侯爵に任じたとは言え、客分。

 正式なる余の臣下ではないから、あえて言わせてもらうがの。そろそろ良いのではないか?

 媒酌は余が務めても良いぞ」


 絶句。

 そりゃあね、

 そりゃあ、ルーの気持ち、知らなかったと言えば大嘘になる。

 でも……。

 歳の差もあるし、ルーの気の迷いってこともあるかもじゃん……。

 ルーが、俺に、自分に自信を持てって言ったの解るけど……。

 頭ん中でぐるんぐるん回る。


 「あえて、こう呼ばせていただきます。

 我が王よ。

 ルイーザ殿はまだ歳若く、私と釣り合わないのではないでしょうか?

 また、ルイーザ殿のお父上からも、『派遣されている間に、なぜ手を付けなかった?』と問われております。

 1年後、ここから去るのみであっても、子は残して行けと。

 しかしながら、私としては、それはできません。

 我が子を持つとすれば、妻となる相手とも、当然子とも共に生活し、思いをそそぎたいと考えております。

 1年、いや、すでに100日が過ぎ、残りもそう多くはございません。

 私は、今、それ以降もこの世界に残るべきか、悩んでおります。むしろ、今は残りたいと強く思っております。

 今は、ダーカスのためにここに残って生きていくことを、きちんと確定させるのが先。

 それができましたら、そしてその時に、ルイーザ殿の想いが先走った何かでなかったら、我が王よ、媒酌人をぜひともお願いしたく……」


 「そうか。

 よっく解った。

 だが、歳の差など……。

 そもそも世界が違えば、年齢の数え方も異なるではないか。

 それに、『始元の大魔導師』殿の世界では知らぬが、こちらでは20歳くらいの歳の差は当たり前。

 こちらは貧しいからな。

 男が家族を養える収入を得るときには、年齢が進んでしまっているのだ。

 それを見ているルイーザは、『始元の大魔導師』殿が考えるほど、歳の差というものに抵抗はなかろうよ。

 それに、そもそもだが、それほど歳の差があるようには見えぬ。

 『始元の大魔導師』殿は、まだその顔にはシワもなく、髪は黒く、ルイーザと10歳も違うようには見えぬが……。

 ……まさか、ルイーザを嫌っていて、その言い訳ということではないのだろうな?」

 げっ、そんなわけ、あるかい!


 「とんでもない!

 『私にはもったいない』、そう思っているだけでございます」

 王様の顔つきが変わった。

 「『始元の大魔導師』殿、自分と釣り合わないと考えておられるのか!?

 これは、さすがに呆れた。

 ……これは、ルイーザが苦労するわけだ」

 今、最後になんか、不穏当なことを口走らんかったか、王様?


 「それは、なにか?」

 「いや、なんでもない。気にされるな。

 解った。

 では、残りの日数、存分に働いていただこう。

 その後は、そうよ、王として悪いようにはせぬ」

 「ありがたき幸せ」

 そう頭を下げた。

 だって、他に選択肢、ないじゃん。


 「とりあえず、リバータの件はご苦労だった。

 数日はゆっくり休むがいい。

 10日後を目処に、水汲み水車ノーリアの設置を行う。

 前回の、避雷針アンテナの設置と同等の、国を挙げての大騒ぎになるだろう。

 エモーリとシュッテがよくやってくれている。

 事故など起きぬとは思うが、当日は同席をお願いしたい。

 余も、祭りを楽しむつもりで同席する」


 「分かりました。

 当日を楽しみにしております」

 そう答えて、俺も退出した。

 これが終わったら、王様も休めるようになるといいなぁ。



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 この回を挟む、前回と次回ですが、この世界の地図があった方が話が解りやすいと思いました。

 でも、絵心なんかないので、カフカ@AUC(@Kavka_AUC)様に教えていただきながら、なんとかソフトを使って描くことができました。

 感謝です。


 質は恥ずかしいので問わないでください。

 まぁ、読んでいて位置取りが面倒だったら、ご覧くださいませ。


https://twitter.com/RINKAISITATAR/status/1338663109058129920 

 


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