第18話 まとめよう(対応策最終)
一気にいろいろの可能性が広がった。
シルバー
基本的な案は、固まった。
狂獣リバータは、レンジャーのジャンさんの香油で入り江から追い出す。
リバータがいなくなったら、ギルドで募集した100人とダーカスの有志で、波打ち際にある分まで、手が届くすべての骨を可能な限りすべて運び出す。
狂獣リバータが戻ってくるまで、何往復でもする。
その間、魔術師は、ギルドで募集した100人とダーカスの有志の疲れを取る。
まぁ、実際にはカフェインみたいなもので、ずっと疲れないわけじゃない。
そのあとで倍も疲れが出て寝込むこともあるらしいけど、とりあえずは骨の回収が先決。
俺は、できうる限りのコンデンサを現場に持ち込んで、魔術師さんたちが使う魔法の魔素の供給をする。
ついでに、予想外にリバータが戻ってきて、誰かが危険にさらされるようであれば、コンデンサを電気ショッカーとして使ってその動きを止める。
出発は2日後。
狂獣と戦いだよ。
どんなことになろうとも、死者だけは出さないようにしないとだ。
それが終わり次第、ケナンさんのパーティーは、ダーカスで装備を整えてトーゴに移動、安全索の設置に協力するのと、トーゴの鍾乳洞の探検に入る。
こちらは、再びコンデンサの貸与をする。
ちなみに、王様は、これらの件について、すべて無税を約束してくれた。
海から採れるものは、什一税の対象外だって。
王権の制限をした後に、議会が課税を決める可能性はあるけど、少なくとも3年間は肥料も無税ってことになる。
これは、タットリさん大喜びだった。
骨が届き次第、エモーリさんは
石工のシュッテさんは、すでに水路と
石工さん達は
工事で生じるであろう手順の問題とか、事故とかについては、一番若い魔術師さんが現場にいて、魔法でできるサポートはすべて行う。彼は、建物自体の原設計者でもあるし、
シュッテさんと他の石工さん達は、ネヒール川に架ける石のアーチ橋の準備に入る。
これも、前に実際に作られたのが数世代も前なので、石工さんたちの間でも口伝しか残っていない。
予想よりも時間が掛かるかもしれないけど、ヴューユさんが魔法でできるサポートは優先的にしてくれることになった。
他の2人の魔術師さんは、俺と一緒にその間にも来襲してくる魔素流への対処。
リバータへの対処もあるし、コンデンサは満タンにしておかないと。
で、いくら満タンにしても、これだけ魔素の消費が激しいと、魔素流来襲が待ち遠しいっていう今までなかった事態になる。
もしも狂獣に対抗するって事態になると、コンデンサは一気にすべて空になってしまうから、できるだけ早く再充填したいし。
たった数ヶ月前なのに、そのときの魔素ビンボーの状態にはもう戻れないからねぇ。
王様の判断で、
スィナンさんは、ゴムシートだ、ロープだ、そしてゴムボートだと、開発しながら量産も求められるっていうデスマーチに追われる。
タットリさんは、その他の農家さんと連携を取りながら、水路を引くことと潅水に忙しくなるだろう。そのあとは、ひたすら肥料撒きかな。
ただ、1つ揉めたこともあって、トーゴの鍾乳洞下の広大な湿地帯の開墾と、イコモとコシヒカリを作る技術指導に、誰が行くかって。
100人の開墾者を現地に放り出すわけにはいかない。高い技術力のある、中心となる人が望まれるけど、そういう人は自分の農地を耕すのに忙しいからね。
パターテさんも歳を取っているから、息子のタットリさんを手放したくないって。
気持ちはホント、よく解る。
そこに、「あれっ」という提案をしたのは王様だった。
「パターテよ。
もう一花、咲かせてくれぬか?
必要とするのは、やって見せる能力だ。
衰えたとは言えども、やって見せることはできようし、その場その場で若い者から求められる判断を誤るようなこともなかろう?
隠居にはまだ早い。
そして、余が見るところ、息子のタットリは1人でも立派にやっていける。
どうだろうか?
ダーカスのためにトーゴの農村長として、若い者に囲まれてのもう一働きをお願いできないだろうか?」
……そか、必要なのは、ばりばり働ける人じゃないんだ。
パターテさんならば、身体は動かなくても技術はあるし、年齢が行っているから100人の開墾者も言うことを聞くかも。
「王よ、私も歳のためか、節々が痛くての。
でも、もはやこのまま枯れると思っていた儂への、せっかくのお言葉じゃ。農村長は荷が重くとも、指導はさせてもらおうかの。
咲くかどうかは判らぬが、一花を咲かせてみましょうかいの」
「パターテ。
南のトールケの火の山に温泉リゾートができたら、最初の客として招待しよう。
トーゴの農村長としての務め、よろしく頼む」
……決定。すごいもんだ。王様のお言葉の威力。
ただ、老骨を開墾地で野宿させるわけにはいかない。
だんだんに石造りの家を建てる必要はあるけど、今は石工も石材も足らない。
でも、手があったんだよ。
スィナンさんが作ってくれた、大きい面積のゴムシート。
狂獣リバータの撃退の電気ショッカーのためのコンデンサを並べるために作ってもらったヤツ。
これで、相当の大きさの簡易テントができる。電気ショッカーに使ったあとは、どうしようって話だったからね。ゴムシートの再利用先としては、願ったり叶ったりだよ。
で、そんなことも含めて、人を使うことはすべてハヤットさんの双肩にかかっている。入植者の100人も、きちんと意思を確認しないといけない。
結局は、その人達の人生の相談と示唆も。
ケナンさんのパーティーで、1番時間がありそうなセリンさんが、ギルドに入り浸っているのもそんなことからかも知れない。冒険者としては、現役のままミスリル
たぶん、セリンさんには、それが見えている。
日常の細かい諍いとか誤解の芽は、ラーレさんが細かく摘んでいる。そして、その細かい視点もセリンさんは学ぼうとしている。
そして、最後にだけど、学校はとても順調。
校長先生がなにかを言うと、周りの全員がハイハイって言うことを聞く。あの威圧と若〇規夫ボイスに逆らえる人なんていないからね。
子供を学校に行かせたくない親って、最終的にそれなりには残ったんだけど、最後には皇帝のような、威圧の勝利。
あー、怖い。
最後にルー。
ルー、凄いわ。
就活の笑い話に、誰もが「自分は潤滑油」って答えるってあったじゃん。
その潤滑油を、初めてまともに見た。
その外見と、押しと引き、洞察力と(悪い意味でなく)口の上手さ。
ネゴシエータの役割で、誰からも恨まれない。
魔術師も、職人も、俺の『始元の大魔導師』も、そして王様に至るまで、すべての立場に立てる強さ。
ジョーカーみたいだよね。
ハヤットさんが最後はギルドのためってのがあるとすれば、ルーのはダーカスのためっていう視点が最後まで動かない。
そもそもルーは、「王の意思と魔素を使いこなす魔術師の双方を理解し、つなぐ役割の者」だった。だから、王様とも会えるんだけど、王様も忙しいからただじゃルーを帰さない。
必ず、何らかのお使い仕事の依頼をする。
で、そこからだんだんに居場所を広げて、今じゃグループLみたいだよ。
昔読んだSFにあったんだ。
多数のプロジェクトが動いている時に、その調整のために、情報の一元化をすることに特化したチームが必要って話。で、そのチーム名がグループLだったんだ。
それはきっとリンクを意味するLだったんだろうけど、ここじゃ、ルーのLだよ。
お陰で、俺も楽させてもらっている。
ルーに話しておけば、課題とかだんだんに解決しちゃうからね。物資のこれが欲しいとか、足らなくなるかもとかも。
もしかしたら、あの親父殿の威圧との調整で磨かれた能力かもしれないけど、こんなとこでそれが活きるとはねぇ。
で、1つめでたい話。
リゴスから、戻ってくるってさ。
ルーの母親さん。
それを話すルーは、とても嬉しそうだった。
いよいよ、なにかルーにお返しを考えなきゃだなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます