第34話 貴族の生活?
俺、どうやら今日の夕食時には、『始元の大魔導師』にして、
ただなぁ。
俺、単に運のいい第二種電気工事士だぞ。貴族様なんかにしちまって、本当にいいのかい、あんたら?
そもそも、貴族ってのがなにをする存在なのか、俺は全然知らないし、ノブレス・オブリージュとか言われても、それも良くは解っていない。
中世もの、剣と魔法ものとか、RPGだって遊んだけど、せいぜい後日譚でお姫様を娶ってめでたしめでたしとか、文字が流れて終わりなんだよね。
新任貴族研修とかしてくれないとなにも解らないし、親父さんが一代限りの貴族扱いのルーにも解らないだろうなぁ。
とりあえずは、旨いものを喰っちゃー寝すればいいのかなぁ。
俺は、一代限りどころか、当座1年限りの貴族様だからね。
お祝い会のあと、そのまま叙勲のセレモニーに続いたんだけど、俺、作業服のままだし、騎士とか言われても武器とかも何一つ持っているわけじゃない。
言われるがままに、立ったり座ったり、跪いたりしていたらセレモニーは終わったんだけど、何がどうされていたのかも理解できていない。
たださ、こんな感じだと、きっと将来に俺の銅像だの肖像画だのが作られることがあったら、作業服でペンチを持っているに違いないよ。
そう思うとさ、
その考え方でいくと、「電」が付くより「魔」がついた
元の世界に戻って、就職活動する時に、履歴書に書いたら何が起きるだろう? 頭のおかしな人扱いになるだろうけど、やってみたくはあるよ。
賞罰欄に
で……。
貴族にはなったけど、領地があるわけではないので、収入は王家からの配給に頼ることになるらしい。今時点では、一代貴族とそこは同じだけど、将来2つ目、3つ目
王様、もしかしたら、俺に「1年で帰るな」って思ってくれているのかな。
どっちにせよ、今時点ではそもそもの土地がないんだから、すべてにおいて辛抱してくれってことだった。
ま、メシに困らなければ、それで俺はいいんだけど……、なんて思っていたら、王様、とんでもないことを言い出した。
とんでもないこと……、それは拝領屋敷についてだ。
王様の言うことにゃ、恐ろしいことに、ルーの親父さんを追い出してそこに住めって。魔術師は一代限りの貴族扱いなので、魔法が使えなくなるとその資格を失う。
魔術師は通常あまりに早死なので、資格を失う前に死ぬのが当たり前。だから、適格性を失った魔術師は、ルーの親父さんが歴史上初めてだそうだ。前例はないから良いとも言えず、国有財産の屋敷の主として住まわせておくわけには行かないってさ。
で、この冷たいことを言い放つ王様が、妙ににへらにへらした表情だったんで、その真意は俺にも悟れたよ。
はいはい、解ったよ、解りましたよ。
生命力の喪失を癒やされきっていない人を追い出すなんて、俺にはできませんよ。
俺の屋敷に誰が住もうと俺の勝手だし、となると、ルーとルーの親父さんは、とりあえず一年間でも安住の地を得たことになる。しかも、引っ越し不要で。
俺も引っ越し不要で、今の部屋に居座ればいい。
法ってか、きまりとその運用ってのは凄いね。単純にそう感心したよ。
もしかしたら、いや、もしかしなくても、この王様って、
ルーは、王様の話と俺の解釈を聞いて、単純に喜んでくれた。
どうも、
ルーは可愛いし、俺も悪い気はしないけど、親父さんが一つ屋根の下だもん。口説くに口説けないやね。
まぁ、それもまたよし、かな。
ともかく、今のところ最初の30日間、めでたし、めでたし。
で、いいんだよな?
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