第7話 桜の令嬢
…アレ何してんだ俺。
全身が鉛のように重いし灼けるように熱い。
この感覚は天使の
過去に核兵器によって出た環境被害を完全に修復しようとして脳内を焼き尽くし精神すらも枯らし尽くしたと聞く。
「…にしても不味いな」
はずだがあの少女を癒した際にそのリミットを超えたかも知れない。そう考えるなら不味いな。体を全快させたとは言えどもあの恐慌状態だったしな。
「コレ戻れるか?」
そう呟くと白い光に身を包まれる。
そして再び意識を失いー
「はっ!」
まるで水面から顔を出すかのような感覚で意識を取り戻すと何故か彼女にセファー・ラジエールを翳した状態で戻って来た。
「…治ってる?」
「ああ治した。問題ないか?」
あの空間に吸い込まれた以上修復過程を見れてないのはかなり痛い。
「ええ。矢傷も完全に塞がっているから大丈夫わ」
右手で壁に当たり砕け散った矢を指し示す。なるほど。逃れなかったのはそういう訳があるのか。
「それと大丈夫なの?能力の無断使用と一般人への治療行為は禁止と聞いていたけど?」
「それは大丈夫。さっきコレを通じて許可が出た」
白表紙の本を指して言うと彼女は複雑な表情を見せる。…懐かしさ、尊敬、憧れ、後悔、懺悔。全くもって噛み合わないわけでもないが絡み方としてはかなり複雑だ。
「そうなのね…。知っているとは思うけど私は桜小路あやめ。貴方と同じ学園高等部1年のAクラスよ」
桜小路あやめ
巨大国際企業【サクラノミチ】を経営する桜小路家のご令嬢。確か射撃とフェンシングでは有名だと聞くが足を潰されて利き腕も使えないからあんな状況なのだろう。そして何故かゴブリン達は銃弾を弾いていた。
っと話が逸れてる。確か常に学年トップの成績を維持しており文武両道・容姿端麗などと絵に書いたようなご令嬢。真っ白な髪で髪先がほんのり桜色に染まっており薄ピンクの瞳やアルビノの如きの白肌は神の造形美とも言われるほど。
こう対面してみると本当に凄い。それで居て出る所は出ていて締まっているところは締まっている。
一時期その全スペック故に学園の女子生徒の多くからイジメを受けていたとも聞くがこんな少女にそれが利いたとは思えないほどの強さを感じる。
「俺は渡辺蒼司。
「なるほどね。脳筋が多いと聞く【セフィロト】所属の全知の中衛ね」
「そうだ。と言っても今代【セフィロト】はそこまで脳筋が多いという訳でも無いがな」
まあ突きに特化した槍使いに自身の身長の3分の2ほどの刃を持つ斧を振り回す人も居るが。それ以外だと珍しく搦手が得意な人が今代は多い。
「状況を確認したいが…動けるか?」
「ええ。でも不思議ね」
「ああ。まるでゲーム内に入り込んだかと思うなコレじゃあ」
殺したはずのゴブリン達は灰となって消えてるし何故か紫色の石や自身の体の一部や装備品を残している。そう言うものだろうか?
「情報を擦り合わせたいが何処か安全な場所をー」
知らないか?それを告げる前にそのアナウンスが流れる。
【世界初のダンジョンへの侵入を確認】
【世界初のモンスターの撃破を確認】
【起動条件を満たした為
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