第2話 学園図書館
手元のタブレット端末に写し出された小説を読んでいるとふと妙な感覚を覚える。こうなにか大きな見落としをしているような。
「如何かしたか
「いや少し嫌な気配がしただけ」
すぐ側でスマホを弄っていた親友の本城颯太にはその違和感を感じたことを悟られていたらしい。ただそれとは別に少しソワソワしている。
「あ〜お前の直感って変な癖があるよな」
「変なってな。今回も良いとは思うが…」
端末の向きを変え一部の設定を指す。
「毎度思うが人をモデルにするなよ」
颯太は人気ラノベ作家白峯ハジメとして活動しており誤字脱字がないかの確認をする事が多い。なんでも著者や編集だけでは気付かないこともよくあることだと。コイツの場合は本当に稀なのだが本人的には0にしたいらしい。あと何故かよく自分の周辺の人物をモデルとすることが多い。今回に関してはそれが顕著だ。
「孤児でとある秘密を抱えた女性に拾われてその女性に武芸を仕込まれたが故にいろんなモノに目を付けられる俺この人物を知ってるんだが」
というか俺自身だ。渡辺蒼司という名前もその女性が名付けたものだし自衛のためと叩きつけられた武芸により色々と眼を付けられていることも事実。
「はっはっはそれは気のせいさ」
「高笑いやめい。今日は居るのか?」
「午前中だけだし居るよ。誰かとは違って学園内での仕事なんてないし」
授業中に小説書いているくせによく言うな。それでも自身の執筆ジャンルに関わる場合は高得点を普通に出すしそうでない場合も平均点はキープしているから問題は無い。
「…仕事してくる」
少しだけ恨めし顔で颯太の顔を睨み手荷物を纏めるとすぐに学園内にある図書館へと向かう。
学園図書館は教室がある高等部A棟から約100mは離れている特別棟でそこから50m離れた地点に旧特別棟という今は使われていない特別教室が多く点在する校舎もある。その旧特別棟は根も葉もない噂だったりちょっとした火遊びの場にも使われていたりするのであまり近寄りたくもないのだが地下には最新鋭のシェルターという災害時には非常にお世話になるので常時開放されている。
…もっともその所為でそんな事態になっていたりするのだが。
ちなみに屋上は告白スポットとしても有名である。ここかなり良い私立にしてはそこら辺がかなり緩いだよな。
今時珍しい事に家が決めた婚姻関係のせいだろうか?どちらにしろ孤児である俺には関係のない事だが。
「ごめんね渡辺くん。急に呼びつけて」
図書館の司書室に入ると既にその人物はいた。…機械音痴なのにまたパソコンと睨めっこしているよこの人。
「いえ大丈夫ですよ赤嶺さん」
某メロンパン大好きツンデレのような赤髪をポニーテールで纏めた人物はこの学園図書館の司書の
ただ仕事を掛け持ちしすぎて今のようにかなり危険水準に落ちるまで周りにヘルプを出さないのでかなり大変な事にもなる。今回はたまたま気がつけたのでセーフだが。
「取り敢えずラミネートとデータ入力をお願い」
「了解。って今日会合の日ですか?」
「うん。珍しく遠場でね。お昼には閉めないといけないんだ」
そういえば今日ってそんな長く開けないって図書館通信に書いたよな。ここ最近珍しくやる事が多かったからこっちまで思考をあまり割けていなかったのが仇になったか。
「分かりました」
ラミネート作業用の道具を俺専用の机の上に広げて足元にある新刊の図書を幾つか取り出しナンバーシールを貼りカバーを掛ける。
「終わりました」
「は〜い。というか今日もう終わってるよ?」
手元の時計を見ると既に13時である。全然気付かないのもなんだが少しは声掛けてくれよ。
「っとマジか。会合は?」
「大丈夫よ今から出ればって」
微かな地震が起きる。揺れ具合からしてマグニチュード3くらいか?
「最近多いわねこの手の地震」
「ええ。少なくとも今日だけで50件目だ」
「まあ最近多いからこの程度の地震じゃあ公共交通機関は止まらないよね」
確かに。新年度から異様なほどにマグニチュード3以下の地震の数が増えている。
「コレって何かの凶兆よね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます