余白の時間



たとえば爪の根元が先にまで伸びるあいだ

窓辺の懐かしい風景に思いをはせる日があると思う

たとえば海水から雲ができあがるまでのあいだ

ひとの手の温かさにはげまされる日があると思う

たとえば新品のティーシャツがくたびれるまでのあいだ

取りこぼしたものの数をかぞえる日があると思う

たとえば葉が落ちてから土に還るまでのあいだ

光を求めて空を見上げる日があると思う

たとえば体の細胞がすべて入れ替わるまでのあいだ

ぼくの名前を呼ぶ声になぐさめられる日があると思う

たとえばまた春が巡ってくるまでのあいだ

ふと眠るように死にたくなる日があると思う

たとえばきみと出会ってから別れるまでのあいだ

永遠に焦がれてまぶたを閉じる日があると思う

たとえば地球が生まれてから消えるまでのあいだ

きみが幸せで涙を流す日があればいいと思う

ぼくが幸せで涙を流す日があればいいと思う


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