第13話
次の日。
昼食後に外で昼寝をしていました。
大好きなアボカドサラダを何皿も食べてお腹がいっぱいなっていました。
「シープちゃん」
誰かが私を呼びました。
「シープちゃん」
待ってください。あと一皿、食べ終わるまで待ってください。
後ろ足を何度か叩かれました。
「アボカド・・・サラダ・・消えちゃう・・・」
サラダを追いかけて行ったら、きりんのきいちゃんにぶつかりました。
「めめめっ!」
「ごめんなさい。お食事の邪魔しちゃったみたいですね」
「牧場主さんじゃなくてよかった。アボカドサラダは・・・夜食べます」
きいちゃんがくすりと笑いました。
「えっと・・・シープちゃんに、お願いが、あります」
きいちゃんは、何度も顔を上げ下げしながら言いました。
「この間、山田さんが撮った動画、見たいんです」
山田さんが撮った動画、お千代さんが主役だったものも、みんなでボール遊びしたものも、私たちはまだ見ていません。
「それなら、山田さんに言えば」
「そうなんですけど・・・」
きいちゃんが、再び、下を向きました。
「ちえちゃんと一緒に映ってるのが見たいんです。ちゃんと、お話できたか、ちょっと、心配で」
「わかりました。じゃ、山田さんに」
「メリーさんにお願いしてほしいんです!」
「めめ?・・どうして?」
私はモー太郎さんから「動いているかどうかわからない」と言われる首をかしげました。
「山田さん、私たちの言葉に字幕を付けるって言ってたじゃないですか」
「そ・・・そうでしたっけ?」
「そうなんですよ!山田さんのことは信用しているんですけど、私が言ったことがちゃんと字幕になってるかが、一番、気になってて・・・」
きいちゃんは、少しの間、黙ってましたが
「メリーさんに、チェックしてほしいんです!」
私の目を見て、はっきりと言いました。
「わかりました。あ、メリーさんが来たから、聞いてみますね」
私は、メリーさんに向かって走り出しました。
山田さんが帰った後、私たちは小屋の中で、メリーさんと一緒に、山田さんが作った動画を見ました。
本当は外で見たかったのですが、お千代さんに「メリーさんが動物たちと遊んでいる」と怒られたら、メリーさんがかわいそうだ、とモー太郎さんがアドバイスしてくれたからです。
「先にさ、主役のやつ、見ようぜ」
私がモー太郎さんの言葉をメリーさんに伝えると、メリーさんはニコニコ笑いながらこう言いました。
「今日は、動画が見られる機械を2台持ってきたの。お千代さんがここに来ても、みんなでお千代さんが映っている動画を見てるって、この機械を見せたら、お千代さん、怒らないでしょ?」
みんながワーっと大きな声で騒ぎました。
「しっ!静かにしないと、ホントに、お千代さん来ちゃうよ!」
ロバのローバさんが注意すると、みんな、大きな口を開けて静止しました。
「じゃ、始めるね。お千代さんが主役の動画です」
メリーさんが機械を触ると、音楽が流れてきました。
お千代さんの横顔が画面に出てきたとき、みんなが一斉に「おー」と言いました。
「山田が言ってた。ただオカミが動いてるだけの動画なのに、10分もかかるんだって」
「やだあ、アタシ、後姿しか映ってないじゃない」
「花子さんは大きいからから映ったのよ。アタシは、ちっちゃいから、ぜーんぜんっ、映ってない」
花子さんとローバさんがにらみ合ってる中、私たちは
「このとき、私の前を通った」
「やっぱり、オオカミって怖いよね」
などと言いながら動画を見てました。
「オオカミのウォーキング動画はここまでにして。みんなが映ってるの、見よう」
メリーさんがそう言って、別の機械を出しました。
「どんも~。シンパパの山田で~す」
山田さんの声が流れてきました。
「きいちゃんが見たかった動画だよ。ほら、ちえちゃんときいちゃんが映ってるよ」
メリーさんが画面に映るきいちゃんを指さしました。
「私、ひどい顔してる。恥ずかしいです。山田さん、消してくれないかなあ」
きいちゃんが、両方の前足の間に顔を埋めるように、隠れました。
「私は、この牧場が、大好きです!もっともっと、ここで働きたいです!」
ちえちゃんさんの声が聞こえると、きいちゃんは、ぱっと顔を上げました。
「動物の言葉がわからなくても、動物は大好きだし・・・辞めたくないです!」
ちえちゃんがそう言うと、画面から、モー太郎さんの鳴き声が聞こえてきました。
「やべぇ!俺の声が入っちゃったよ!」
「大丈夫です。なに!だけですよ」
きいちゃんの言葉を聞くと、モー太郎さんはホッとした声で鳴きました。
「山田、ちゃんと編集してたんだな」
きいちゃんは、じっと画面を見てました。
「メリーさん、きいちゃんの言葉がちゃんと字幕になっているか確かめてくださいね」
私はメリーさんに話しかけました。
「任せてね。きいちゃん、シープちゃん」
メリーさんが、にっこり微笑みました。
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