第6話

 テイクワンの撮影が終わりました。

 お千代さんは、私たちの周りをゆっくりと歩き回るだけで、花子さん以外は動くことなく、お千代さんから指示された場所でじっとしてました。

「テイクツー行く前に、休憩します」

 山田さんが大きな声で言いました。

「社長とお千代さんは、モニターで撮影の確認してくれますか?おれは、メリーさんとちえちゃんと3人で、動物さんたちに水をあげてきます」

 ちえちゃんさんとメリーさんが大きなバケツを持って、私たちのところにやってきました。

「みんな、お疲れ様」

 山田さんが大きな水飲み用の容器を持って来てくれました。

「暑かったでしょ?具合悪くなってない?」

 大好きなメリーさんが私を隣に来てくれました。最近、メリーさんに会えなかったから、私は嬉しくて思わず「めめー」と鳴いてしまいました。

「シープちゃん、毛が伸びたね。暑くない?」

「暑いです。でも、丸刈りは恥ずかしいです」

「あはは。ふわふわしてないシープちゃんも可愛いよ」

「いいなあ。メリーさんは、シープちゃんとお話しできて」

 気が付くと、ちえちゃんさんがメリーさんの隣にいました。

「社長から、動物の言葉がわからないから、今月で辞めてくれって言われたんです。メリーさんはシープちゃんの言葉がわかるから、他の動物の言葉がわからなくても、シープちゃんから聞けるじゃないですか。でも、私は・・・」

 ちえちゃんさんの目から、大きな涙がこぼれました。

 メリーさんは、ちえちゃんさんの背中を優しくさすりました。

「動物の言葉がわからなくても、みんな、ちえちゃんのことわかってるよ。ね、シープちゃん?」

 私はちえちゃんさんのそばへ行き「めめー」と鳴きました。

「あり・・・ありがとうございます。シープちゃんもありがとう。私、この牧場で働けて、本当に良かったって思ってます」

 ちえちゃんさんが、両手で顔を覆ったら、山田さんも、他の仲間も集まってきました。

「ちえちゃん、泣くのはまだ早いって」

 山田さんが、ちえちゃんさんに言いました。

「お客さんが来るようになったら、ちえちゃん辞めなくてもいいんだからさ」

 私たちは「そーだ、そーだ」と言いましたが、ちえちゃんさんには、私たちが大騒ぎしているようにしか聞こえません。

「そろそろ、テイクツー、始めよっか?ちえちゃん、レフ板の係、お願いね」

 ちえちゃんさんが明るい声で返事した時、モー太郎さんがしっぽで山田さんを叩きました。

「山田。頼みがあるんだけど」

「なんすか?モー太郎さん?」

 山田さんはモー太郎さんの口元に、耳を寄せました。

「私、レフ板持ってきます」

 ちえちゃんさんが事務所へ戻っていきました。

「シープちゃん、頑張ってね」

 メリーさんが、私の頭を軽くなでました。

 

 遠い遠い、忘れていた、メリーさんとサーカスで過ごした日々を思い出してしまいました。

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