第4話

 撮影の前の日。


 小屋に来た山田さんが私たちに言いました。

「テイクワンって言葉を聞いたら、あいつの指示通りに演技すること。んで、テイクツーとかテイクスリーって言葉になったら、あいつに見つからないようにふざけていいから。テイクワンは、あいつの理想の場面を作らないといけないから、そこだけは、おれのために協力して」

 山田さんは、私たちを一匹ずつ見ながら話をしました。

「オオカミが牧場を徘徊する動画なんて、誰も見ないと思うけどさ。みんな、仕事だと思って、あいつの指示通りに演技してね」

「山田さん、大変ですね」

 きりんのきいちゃんが、長い首を折り曲げて、山田さんに頭を下げました。

「ありがと、きいちゃん。早く撮影終わらせようぜ。あいつらが帰ったら、おれ、自分の動画用にみんなのこと、撮ってあげるから」

「良かった~。ちえちゃんに肌きれいにしてもらったのが無駄にならなくて」

 ゾウの花子さんが言いました。みんな笑いました。

「じゃ、練習するよ。おれが、テイクワンって言ったら?」

「お仕事!」

「演技!」

「ふざけない!」

「怒られても我慢する!」

「言われたとおりにする!」

「ストレスためない!」

「素晴らしい!みんな優秀じゃん!」

 山田さんが私たちに拍手してくれました。

「テイクワンが何回も続いちゃうかもしれないけど、我慢してね。必ず、テイクツー撮るから」

 山田さんはニコニコ笑いながら小屋を出ました。


「山田、ホントは、しんどいんだろうな」

 モー太郎さんが言いました。

「オオカミの指示で撮影なんて、やりたくないよな」

 モー太郎さんは、いつも、山田さんのことを心配しています。山田さんのことを自分の本当の友達のように思っているようです。

「みんな、山田さんのこと、助けてあげよう!」

 ローバさんが突然立ち上がり、そう言いました。

「そうだね。明日は、山田さんのために、頑張ろう!」

 チーターのチッタさんが、しっぽで何度も床を叩きました。

「山田を楽させること、山田の動画を良くしてやることが、今の自分たちにできることだな」

 モー太郎さんがゆっくりと立ち上がりました。

「あの、考えがあるんだけど・・・」

 モー太郎さんの言葉に私たちは驚きました。そして、すぐに、モー太郎さんのところに集まりました。

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