第3話 無題の本

「じゃあ私は貴方の記憶を戻す手掛かりを考えるわ。貴方は探索でもしていて。」

「了解。」

とは言ったものの、この見渡す限り真っ暗な場所に何かがあるとは思えない。

だが、このまま待っていても何も無い。探索をしよう。

灯りを念じる。

今度はロウソクに灯りを灯すことができた。

しばらく歩くと、1冊の本が落ちていることに気づいた。

「なんだろう、これ。」

見てみるとタイトルがない。

「ひとまずこれをアイに渡してみるか...」

帰ろうと後ろに一歩踏み出すと、一瞬でアイの所へ行くことが出来た。

「これも心の中だからか。」

一人で勝手に納得出来てしまった。

「おかえりなさい。あら?その本は?」

持っていた本を渡す。

「落ちてたんだ、タイトルが書いてない変な本なんだよ。」

「へぇ。読んでみましょう。」

「中にはタイトルが書いてあるわ。」

「i」

本にはそう書いてあった。

アイはページをめくる。

活字に慣れていないのか3ページと経たないうちに寝てしまった。

目が覚める。

アイが丁度本を読み終えたところだった。

「どんな内容だった?」

「要約すると、部屋に閉じ込められた人が脱出する話だったわ。」

僕には微塵も面白く感じない話だが、今の境遇と似ている所もある。

「この本が打開策になるといいんだけど。」

「そうね。」

「そろそろ本題に入りましょうか、貴方、何か思い出した事はある?」

「う〜ん」

「自分のプロフィールを言ってみなさい。」

「天野ナツヒコ、14歳、7月24日生まれ...あっ」

「少なくとも年齢と誕生日は思い出せてるわね。」

「なんで忘れてたんだろう、こんな大事なこと...」

「提案があるわ」

「何?」

「私はその本が貴方の記憶のトリガーだと思うの、だから本を持ってきて渡して欲しいのよ。」

確かに。

「分かった。」

「じゃあまずは貴方に道具を作ってもらわなくちゃ。」

「なんで?」

「このままだとお腹が空くでしょう?」

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