第2話 自分探し

見れば見るほどに彼女はキレイだ。

彼女の菫色の髪の毛、大人っぽく見えるがどこかに寂しさを隠したような顔、サファイアをはめ込んだような瞳に僕は惹かれてしまった。

比べて僕はどうだ?ボサボサの髪の毛に不細工な顔、オマケに一重の両目だ。とても彼女に近づける相手ではない。

そんなことを1人考えていると彼女はこう言った。

「貴方の名前は?」と

反射的に僕は答える。

「ナツヒコです、天野ナツヒコ。」

「そう、もう一度言うけれど私はアイ貴方の自分探しを手伝ってあげる。」

「自分探し?」

よく考えてみると自分が天野ナツヒコということ以外思い出せない。

自分の記憶のビンに栓がしてあるような感じだ。

一体僕は誰で何をしていたんだろうか?

そんな僕を横目に彼女は話し続ける。

「自分探しは貴方の場合は自分を知るって言ったほうがわかりやすいかしら?」

「自分を知って、自分を思い出していくってことよ。」

僕はわけも分からぬまま質問をする。

「ここは何処ですか?」

「そうね、教えてあげる。簡単に言うとここは貴方の心の中よ。」

「心?」

「ええ、心の中よ、これは貴方が見ている夢のようなものよ。だから、貴方の気持ちや記憶でいくらでも変えられるわ。」

「例えば...そうね、この真っ暗な箱みたいな所を明るくすることだってできるのよ、やってみて。」

と言われたので、強く念じてみた。が、豆電球の灯りが付いただけでほとんど変化はなかった。

「やっぱり貴方の記憶が欠けているからかしら、影響力がほとんどないわ。」

彼女が僕を勢いよく指さす。

急に指をさされてしまったので不覚にもドキッとしてしまった。

「パリンッ」

豆電球が割れた。

「うわぁっ!」

「この程度で壊れるなんて...貴方のメンタルは豆腐以下ね。」

「豆腐以下って...」

「だって事実だもの、仕方が無いから貴方の記憶を取り戻しましょう。」

「あと、いい加減私の事彼女って呼ぶの辞めてもらえる?」

「まさか心が読めるのか?」

「当たり前でしょ?ここは貴方の心の中よやましい事を考えてることもお見通しなのよ。」

恥ずかしさのキャパオーバーだ。顔が茹でダコになってしまった。彼女...アイは想像以上に可愛くない女だった。

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