◆第八章◆ 砂塵とともに(7)

 ニールが騎馬の姿に戻り、全身から熱と蒸気を発し地に伏せる。

 ディーンは負傷した脇腹を抑え、崩れるように片膝をついた。

 呼吸を荒げ、肩で息をする。その背後に――

「グ……ググッ……、キ……貴様ァア――!! こノ……妾に――神、に向カっテ……」

 眼窩から後頭部へと風穴を空け、片腕を失い、外殻かおの半分をさらけ出したオルムが不死者の如く、足を引きずりながらにじり寄る。

「ユ、ルさ……ヌ。例えこノ身が朽チようとモ――おりヴぃあ……貴サマだけは――」

 震える右手をかざし、ディーンの頭に狙いを定め――

「貴様ダけハ、殺スッ――! 死ネェェィッ……!!」

 撃発! 指先に力を込める――!

 だが、弾丸が放たれることは無く――銃身内で暴発、右腕が爆散する!

「ナ――何ィィィィ……!? コ……こレは――まサカッ――!! アノ小僧ノッ……!」

 砕け散った機構と共に舞う、一発のライフル弾。

 暴発の衝撃で亀裂が走り、胸部の外殻が弾け飛ぶ!

 その奥に潜む核石が禍々しい光をこぼし――後ろ手に構えた銃口の先で輝く。

「懺悔の必要はないぜ。これで――‘終いチェックメイト’だ。――消えな」

 引金が引かれ、撃鉄が雷管を震わせる。薬莢が舞い――銃口が火を吹いた。

 腔線の跡を刻みながら弾丸が突き進み――

「待……ッ――――!」

 邪神の心臓を撃ち滅ぼす!

 輝石を砂塵と散らし――女帝はガラクタとなって砂海に、沈んだ。

 …………

 ゆっくりと立ち上がり、ディーンは銃を収める。

「やったな……アレン……。お前の――勝ちだぜ……!!」

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