◆第八章◆ 砂塵とともに(5)
白い外殻の隙間から覗く青白い光が、大きく円を描き周囲を抜けていく。
シルビアが舞い、ニールが踊る。凶獣が何度目かの死の熱線を吐き、大地を揺らす。
放たれる熱波の波動を掻い潜り、ディーンたちはついに目前にオルムを捉える。
「無様に逃げ惑わずに、潔く殺されにきたか……! 罪深き人間ども! すぐに塵にして歴史から葬り去ってくれるわ……!!」
玉座に座したままのオルムが、ディーンとホークを見下ろし、言い放つ。
「勘違いするんじゃないぜ! アタシらは狩りに来たのさ、自称‘神’の機構獣をな……!! 消えるのはオルム――テメェのほうだ……!!」
大地を疾走しながら、二人は銃弾をばら撒く。
しかし頭を掲げた大蛇の胸部がこれを受け止め、無慈悲にはじき返す。
「何とでも喚くがいい……! もう貴様らには微塵も勝機など与えぬ――!」
オルムの声に、機銃を構えるべく機構獣の胸部の外殻が動き始める。
一定周期で吐き出される熱線を避け――ホークが声をあげる。
「おい――この状況、かなりヤバいんじゃないか!? 弾丸の嵐の中あの熱線をやり過ごすのは不可能だ!」
「わかってる! だからその前に仕留めるしかねぇ!」
ニールがシルビアに並走し、ディーンが答える。
「だが、どうやって!? ヤツはもうこっちの射線に出てくる気はないみたいだぞ!」
「射線に出てこないなら、射線を変えればいい! ホーク、アンタならそれが出来る!」
「無理だ! 反射物がないこの砂漠のど真ん中じゃ跳弾は使えない!」
ホークが首をふって返す。
「反射させる物がないなら――作るまでだ! いいな、ホーク!」
言いながらディーンは手綱を離し、右手にフギン、左手にムニンを構える。
そしてホークの目を強く見つめる。
――――!
ホークは意図を察し、ゆっくりと深く頷く。
「わかった! 一世一代の一発勝負。華麗に――キメてやるぜ!!」
二人は拳銃を握る拳を合わせ、そして離れる。
ディーンが毒蛇の正面へと疾り込み――二つの銃口を向ける。そして――乱撃。
フギンとムニンから放たれた数多の銃弾が一斉に大蛇を捉え――ることなく天へと向けて進んでいく。
「何をするかと思えば――苦し紛れの乱れ撃ちか。しかも的を得ぬとは――貴様の最期としては、余りに哀れな抵抗だったな」
両脇を抜けていく鉛玉を見つめながらオルムが嘲笑う。
――きぃぃ――ん。
ぴくり、とオルムが眉をひそめた。
微かな――金属音。何かが弾け合うようなその音が――
二回……三回、四回――
次第に近くなっていき――
目の前を抜けていく大口径銃の弾丸を見た瞬間、あり得ない角度から飛来した一回り小さな弾丸がそれに弾かれ、軌道を変える――!
「な……何ッ――――!?」
五回目の金属音を響かせ、弾丸が眼前に迫る!
右目に衝撃が突き刺さり――抜けていく……!!
頭を反らしながら、オルムの身体が空に舞い――そして地へと落ちた。
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