◆第六章◆ 真相(7)

「はぁ、はぁっはぁっ、はぁ……」

 暗い遺跡の中を、松明の灯りを頼りにダーレスは息をきらしながらも進む。

 闇から炙り出されるのは活動を停止した、おぞましき無数の機構獣。人間ほどの大きさもある蟻の姿形をした獣は、危険が無いとはいえ間近で見ると背筋に冷たいものが伝った。

 ぐるぐると続く螺旋回廊を抜け、奈落の底にたどり着く。休むことなく、じゃりじゃりと音を立てながら、赤黒い砂と化した獣の亡骸を踏みしめ、先に進む。

 眼前になにか大きな岩のようなものを見つけ、ゆっくり松明を掲げると、巨大な機構獣の首だった。ひぃっ、と声をもらし尻餅をついて倒れ込む。

 だが、ダーレスは滑り落ちた松明を拾い上げ、力を振りしぼって立ち上がる。

 壁を炎で炙り、注意深く見ていくと……斜めに継ぎ目のある箇所を発見する。

 隙間に指を入れ、こじ開けるように体重をこめると、鈍い音を立てて金属の扉が開き――その先に暗闇が支配する空間が現れた。

 空間はかなり広いらしく、手持ちの灯りではその深淵の先を見通すことは出来ない。しかし点々と、等間隔に青白い光を放つ金色の杭のようなものがあることだけはわかった。

「はっ……ははっ、ははははっ……!」

 疲れ切った顔に、わずかな笑みが浮かぶ。松明を放り出しダーレスは光に駆け寄る。そして杭を――超遺物を引き抜いていく。

 やがて――両手いっぱいに封縛具を持ったダーレスが入り口へ向き直る。

「こ……これで、これでいいんだな!? この宝と一緒にワシは自由の身に――」

 視線の先に佇む、白い服の少女に話しかける。

 しかしそれに対する返答はなく――代わりに背後で何かが蠢く音が聞こえた。

 振り向いたダーレスが最後に見たのは――闇に浮かび上がる鋭い眼光だった。

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