◆第六章◆ 真相(2)

 自警団の凱旋から数日が過ぎた。人々の生活は日常へと戻り、再び街に活気が帰ってきた。

 地方保安局。その建物の部屋に一人、ダーレスは戦利品を眺め満足げに口を緩めた。

「くふふ。まったく一時はどうなるかと思ったが……万事うまくいったわい」

 目の前の机に並ぶのは、宝石の輝く装飾品や、歴史的価値を感じさせる美術品。そして改造された銃火器に、違法とされる薬品類だ。

 法に触れる代物ばかりだが、売り捌けば相当な金額になる事は想像に難くない。

「品定めは終わったかい? 保安官さんよ」

 突如背後から掛けられた声に、ダーレスは飛び上がって振り返る。

「なっ……なんだ貴様! かっ、勝手に上がりこみおって! ここがどこだと思っとる! 不法侵入でお縄になりたいのか!?」

 開け放たれた扉の脇。壁に寄り掛かり、横目でこちらを見つめるホークに向かって喚く。

「そんな心意気で上がりこむやつがいると思うか? それより――」

 ホークの視線が机の上の品々を舐める。ダーレスは少しでもそれを遮ろうと身をよじる。

「くっ……。わかった、いくらだ! いくら欲しいのか言ってみろ!」

 隠しきれぬと観念したかダーレスは口止めの交渉に舵を切る。

「そうだな……。ギャングと癒着、結託しての違法な武器と薬物の密輸。それに盗品の横流し、遺跡荒らしでの国財横領。さらに人身売買ときちゃ――」

 ホークが左手をコートの胸元に差し入れ――

「一体、いくらお前の時間を費やせば罪が贖えるのか、見当もつかないな」

 金色に輝く紋章のついた身分証を取り出す。

「連邦保安局所属。ホーク・ギャビンだ」

「なっ……なっなっ――なんだとぉッ!! きっ貴様――執行官マーシャルだとっ!?」

 ダーレスが後ずさり、テーブルにぶつかる。がらがらと証拠品が音をたてて踊った。

「ワ……ワシは知らん、知らんぞ! こっ、これは――そう! これはワシがギャングから押収しただけだ。ワシがそんなことをした証拠はない!」

 苦し紛れの言い訳をまくしたてダーレスが唾を飛ばす。

「……証拠ならある。街に着いた後、いつの間にか隊商の馬車が一台消えていたな? その後を付けさせてもらった。そこにいた連中――お前が警護に集めたならず者のお友だちが、きっちり証言してくれたぜ」

「ア……アイツらめっ……!! くっ、くっ……!」

 顔を赤く染め、ダーレスが歯噛みする。

 ゆっくり右手を後ろに伸ばし――

「……くっそぉッ!! こうなれば手は一つよッ――!」

 叫びながらダーレスが拳銃を抜く。

 ――!

 ホークも腰に手を伸ばすが――僅かな差でダーレスの銃口が先にホークを捉える。

「……はっ、はっ。ははははっ! やったッ、ワシの方が早いっ!」

 ダーレスが歓喜し、高笑いを上げた。ホークは軽く舌打ちし息をつく。

「さぁて、若造。交渉再開といこうじゃないか。その前に――ゆっくり手を上げろ」

 強気の口調になり銃口で指図する。ホークは従い、ゆっくり両手を上げる。

「ふん……素直なものだな。執行官と言えども命は惜しいか。ではワシから貴様に支払う口止め料だが――」

 ダーレスがにやりと笑い――

「この鉛玉をくれてやろうッ! 受け取れいッ!」

 引金に力を込める――その寸前。

 上に向けたままのホークのリボルバーが火を吹く。天井、壁と高音が反響し――弾丸がダーレスの右手から銃を弾き飛ばした。

「! おのれっ……!」

 しゃがみ込み銃へと手を伸ばすダーレスの眼前に、黒い銃身が突きつけられる。

「そこまでだ。ミシェル・ダーレス、各種罪状によりお前を逮捕する」

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