◆第六章◆ 真相

◆第六章◆ 真相(1)

「――だ! 自警団だ! 自警団が――戻ってきたぞー!」

 どこからか叫び声が響き、次第に外が騒々しくなる。窓の外には広場へと向かって駆ける人々の姿。仕事の手を止め、エレナもオリーブの大樹を目指し走りだす。

 広場には大勢の人が殺到し、街全体を震わせるほどの騒ぎになっていた。中央には自警団の幌馬車が停まり、その上に立ったダーレスが手を振りながら群衆の喝采に応えている。

「アレン! どこなの!? アレン!」

 人垣に揉まれながら、エレナが声を張り上げる。

「エレナ! ここだよ、エレナ!」

 その声に辺りを見回すと、オリーブの木の下で背伸びをして両腕を振るアレンの姿が見えた。

 二人は互いの元へと走り寄り――強く抱擁を交わす。

「……ただいま。エレナ」

「お帰りなさい。……アレン」

 少し顔を離し、しばし見つめ合う。

 澄んだ瞳に互いの顔が映り込む。吸い込まれそうな感覚に包まれていく。そして――

 割って入る濁った低音。

 咳払いが二人の意識を引き戻す。

「あっ……お、親方!」

「おっ……お父さん!」

 同時に言い、二人は慌てて身体を離す。

 ホセは黙っていたが、軽く息をはくと肩の力を抜きアレンに向き直る。

「アレン、良く無事に戻ってきたな。聞いたぞ。ハンターを助けて勇敢に戦ったそうだな」

「は……はい! 親方がこの銃を託してくれたおかげです。ありがとうございました」

 アレンはそう言ってライフルをホセに差し出す。ホセはそれを受け取らず――

「もうそれはお前のものだ。俺の息子である――お前のな」

 そう言ってアレンとエレナを見る。

「お……お父さん……!!」

「あ、ありがとうござます。親方――いや、お義父さん! エレナは必ず僕が幸せにして……そして守ります!」

「お……お義父さんはよせ!! まだ店の方は俺がやっていくからな、今まで通りに呼べ! いいなっ!?」

 居心地を悪そうにしながら、ホセが言い捨てる。

 エレナが吹き出し、アレンも笑う。

「はい、わかりました! 親方!」

 …………

「お熱いねえ。ま……これで一件落着ってとこだな」

 木陰から三人の様子を伺いながら、ホークが煙草に火をつける。

「機構獣に隊商の件、それに無事にダーレスから報酬も受け取れたしな。一件どころか万事解決だろ」

 樹の幹に背を預けたままディーンが冗談交じりに言って笑う。

「ん……ああ。個人的にはまだやることが残っててな。ま……こっちの話だ」

 そう言ってホークは上を見上げ、煙を吐く。

「いちいち詮索はしないぜ。アタシを巻き込まないで済む話なら好きにやってくれ」

 片手を上げて言い、ディーンは目をつぶる。

 木々のざわめきと共に抜ける風が心地よい。

「ディーン、お疲れ様。あの……機構獣は? 地図、役に立ったかな……」

 ふいに声がした。気づけば隣には白いワンピース姿。

「ああ、機構獣は全滅だ。バッチリ作戦が立てれたからな。エマのおかげだ」

 ディーンは笑いかける。

 少し後に、エマもにっこりとほほ笑み返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る