◆第四章◆ 存在意義 -レゾンデートル-(6)

 二日が過ぎた。今日は志願者が集まり、自警団が結成される日だ。

 昼下がりの宿屋のラウンジには、テーブルを挟んで座るディーンとエマの姿があった。

「――なるほど、助かったぜ。これで大分プランが立てやすくなった」

 天板の上に広げられた羊皮紙には黒インクで、何かの図面といくつかのメモ書きが刻まれていた。

「いえ――私の情報が少しでもお役に立てたのでしたら、幸いです」

 エマが静かに言い、紅茶に口をつけた。ふぅ、と息をつく。

 調査の際に城門から見た内部の様子と、エマが遺跡内から脱出したときの記憶を照らし合わせディーンは遺跡の見取り図を作成した。

 エマの話によると城壁内の多くの建物は風化し崩れており、あるいは堆積した砂に埋もれてしまっている様だった。

「それで――エマが逃げ出してきたのはこの建物で間違いないんだな?」

 ディーンはペンを回し、図面の一点を指す。それは巨大な柱が印象的な大神殿が建つ場所だ。

「それは間違いありません。沢山の大きな柱があって――おかげで身を隠しながら機構獣から逃げることが出来たので」

 ディーンは黙って頷き、次の質問をする。

「なるほどな。神殿から出た後、城門を抜けるまで危険は無かったか?」

「はい。中と違って神殿の外は何もいませんでした」

 となると――。ディーンは顎に手を当て、考える。

「――襲われて宝石になった人間を見たって言ってたよな。その後、機構獣がどこに行ったか見てないか?」

「ええと……。確か――私とは逆方向。建物の奥の方に向かっていた、ような気がします」

 正直ダメ元の質問だったのだが、これは思わぬ収穫だ。ディーンの顔に笑みが浮かんだ。

「……? どうかしましたか?」

「標的は神殿の奥だ。間違いない」

 機構獣を産みだす機構獣――必然として核石の運ばれる先に、それは居る。

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