第2話 如何なる門も、まずはノックから
「あぁ、疲れた。」
恐らく生徒達の対応に追われるであろうシャルを放置し、早々にあの居心地の悪い場所を抜けて最近与えられたばかりの自室へと戻ってきた。
よくよく見ればテーブルに見慣れた紅い糊で丁寧に蝋燭留めされた黒い封筒があるのだから、恐らくあいつらももうこの場所を特定したと言う事だろう。
随分と重厚感のあるそれに持ち込んでいたペーパーライフで切り、中身を確認すれば以外にも任務の内容ばかりでこの仕事に関しては特に目立った記載はない為、これは後で呼び出される可能性がある。
ただそれはそれとして、今度の仕事内容としては城下町、28地区の第2級貴族の暗殺らしい。
この国では貴族に第1級、第2級、第3級、そして第4級の4種類がある。
第1級は殆ど陛下にとっても直属の臣下とも呼べうる立場の貴族であり、第2級は城下で一番位の高い階級であり、それぞれ何処かの大企業の社長だったり、はたまた何処かの地主や領主であるのが殆どだ。
第3級ともなると俗に言う名誉貴族に当たり、何らかの素晴らしい業績を挙げて貴族になった者達。
そして、第4級はある意味第3級貴族と近しい物があり、此方は戦果と言う意味での業績ではなく、商業的な素晴らしい業績を挙げた者達が得られる貴族の階級だ。
とはいえ、当然ながらこの国には平民も存在する。
ただまぁ平民に関してはその名の通り、本当に階級の欠片もないのだがまぁそれでも最も安定した生活を送れるのは彼らだろう。
暗殺の恐怖を覚えずに済むからな。
コンコンコンッ。
「どうぞ。」
「夜分失礼します、ルーベル先生。」
ほう……?
時間とタイミングは非常に悪い物の、それでもやはり来る覚悟のある奴は居るらしい。
とはいえやってきたのはやっぱり彼らだ。
先の教室でも率先して俺に質問を行い、そのまま顔を出したのは計3名。服装はまぁ元々ここが学校なのだから特に何もおかしな話ではないのだが、それでも顔を出したのはやっぱりこの3人だ。
1人は黒髪紅目の男子生徒で、恐らく平民と思われる。
もう1人は銀髪に仲良く紅色の目を揃え、紅い眼鏡をした男子生徒。
そして最後の1人は紺髪に、本当に仲が良い事に紅色の目をし、青い眼鏡を掛けた男子生徒だ。
まぁ結局は男子ばかりかとは思いつつ、黒髪はそれなりに自信がありげのようで、かなり堂々としている様が伺える。
ただ銀髪の方は緊張からか眉間に皺が寄り、最後の1人に至ってはやっぱり俺が怖いのか黒髪の学生に引っ付いて離れようとしない。
それでも来れた辺りは評価せんとな。
「ルーベル先生、相談があります。お時間を作っては頂けないでしょうか。」
「悪いが、今からは仕事だ。ただ明日の正午であれば時間を作ろう。」
「ほ、本当ですか!?」
「くだらん嘘を吐いても何にもならんだろう。さぁ、お前らはさっさと寝ろ。俺は本職の仕事だ。」
「……? ルーベル先生はどんだけ働いてはるんですか?」
……?
「教職員としての仕事は正午から夕方。夕方から朝までは本職だが。」
「え、ブラックやん!?」
「いや、朝から昼までは寝てるから問題ない。」
「せ、先生。ぼ、僕ら、も、もっと遅くに来ましょうか……?」
「問題ない。ガキが下らん心配をするな、ほらさっさと行け。」
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