第3話 友の為なら何処へでも

「……遅い。」


 数時間前、何とかここの教師になってもらう事を同意してくれたティアがいつまで経っても帰ってこない。

 聞いている限りでは本職の方の任務終了後に王城へ、報告の為に足を運ぶとは聞いていた物の、それでも日付が回るまでには帰ってくると言っていた。

 しかし、帰ってこない。

 仕事を継続出来る程の集中力も完全に害され、仕方なく机の端の方へと放って置かれてしまったとある木の札。

 これらはティアが置いていった物で、よく仕事の本職の業務を行う時に利用する物で、それを俺達も使えるようにと複製してもらった物だ。



 これらは外出札と帰還札と言う物だ。



 前者は夜間、任務がある際に外出している事を示す札で、中身には軽い要件と大雑把な行き先が書いてある紙だったり、USBメモリだったりが入っている物で、俺とシャルのみが開けられるようにと細工してもらっている上に防水、防刃、防炎、防塵。更には呪いやら何やらの状態異常ですらも乗らないようにと。掛けられないようにと調整されているらしい。

 一方、後者は「校内在中」と書かれたただの木の札である為、此方に関しては特に大した意味もなければ外出札程しっかりとした魔法が掛けられている訳でもなく、中に何かを入れる為の空洞がある訳でもない。


 ……何かあった、とか?


 無論、分かってはいる。

 あいつだって仮にも軍人だ、仕事の関係から何らかの非常事態に巻き込まれて危険な目に遭う事だってあるだろうし、多少帰りが遅くなる事だって当然あるはずだ。

 しかし、それでも何の一報もないと言うのはなかなかに謎が残る。

 あいつは何だかんだ言って律儀な性格だ。何かあれば必ず連絡を飛ばすはずだし、その連絡がないのであれば何かの非常事態が起こったとして間違いないはずだ。


「行ってみるしかない、か。」


 コンコンコンッ。


「ディアル、起きてる?」

「あぁ、おはようシャル。悪いがちょっと行く所が出来てしまってな。……ここを任せて良いか。」

「えぇ、勿論。ティアでしょ。日付が変わる頃には帰ってくるって言ってたのに、朝になっても帰ってこないんだもん。気になっても仕方ないと思うわ。」

「少なくともかなり時間が経ってる関係から一応は大丈夫だとは思うんだが、念の為に行ってくる。」

「目星は?」

「恐らく王城だ。ついでに、陛下にも挨拶もしてくる。私も、報告がある。朝食は外で食べる。……すまないな。」

「いいえ。2人で仲良く、無事に帰ってきて下さい。」

「あぁ、行ってくる。」

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